昨年12月に戒厳令を宣布し、内乱首謀罪に問われている尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の裁判が終盤を迎え、韓国メディアは2月中にも判決が出るとの見方を伝えている。尹氏は逮捕直後から一貫して無罪を主張するが、戒厳令で実質的な役割を担った軍幹部からも尹氏に不利な証言が相次いでいる。 尹氏は昨年12月、当時の進歩系野党が北朝鮮の影響下にある「反国家勢力」で、過去の選挙には不正疑惑があったとの「国家的危機」を理由に戒厳令を宣布した。政党の活動やデモなどを禁止する布告を出し、軍隊や警察を国会に投入。1月に逮捕・起訴された。 尹氏は戒厳令下で国会に軍隊がいたのは1~2時間程度で、国会をまひさせる意図はなく「公共秩序を守るためだった」と主張する。 だが、軍幹部からは尹氏に不利な証言が出ている。現場を統率した郭鍾根(カク・ジョングン)前陸軍特殊戦司令官は公判で尹氏から「(国会の)ドアを壊してでも中に入って(議員らを)引きずり出せ」との指示があったと証言。他の幹部からは尹氏が以前から政権運営に悩み、野党に対抗するために非常事態措置が必要との考えを周囲に示していたとの指摘も出ている。 朝鮮日報は11月下旬、最終弁論が来年1月中旬に行われる見通しだと伝えた。通常、結審から判決まで1~2カ月かかるとされる。尹氏と戒厳令を共謀した金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相(内乱罪で公判中)に対する判決も同時に出るとみられる。 また、尹氏は非常戒厳の宣布条件を満たす「戦時などの国家非常事態」を作るため、昨年10月に北朝鮮に軍用ドローン(無人機)を飛ばすよう軍に指示したとして一般利敵罪などでも追起訴されている。 内乱ほう助罪に問われている韓悳洙(ハン・ドクス)前首相については、検察は懲役15年を求刑し、1月下旬に判決が言い渡される予定だ。【ソウル日下部元美】