医師免許がないのに医療行為をしたとして、大阪市の元会社役員の男性(66)が医師法違反(無資格医業)の疑いで逮捕、起訴された。 男性は著名な大学の医学部を卒業したなどと経歴を偽り、大阪市内のがん治療専門クリニックに採用されていた。院長として169人の患者に問診や処方を繰り返していたとされる。自身の研究成果などもアピールし、クリニック側に医師だと信じ込ませていた。 厚生労働省は医療機関に対し、医師の資格確認の徹底を呼びかけている。だが無資格での医療行為は後を絶たない。 東京都のクリニックで2016年、医師免許が無いのにがん患者らに未承認薬を投与したとして、歯科医の男性が逮捕・書類送検された。歯科医師は一般的に口腔がんの治療行為はできるとされるが、投与された患者は胃など他の部位にがんを抱えていたという。 21年には無資格で腫瘍摘出手術などをしたとして、ペルー国籍の男性が医師法違反で逮捕されている。白衣を着て医師を装い、麻酔薬などは薬局で購入していたとされる。 ◇厚労省 採用時の確認徹底要請 医師法は医師に対して2年に1回、勤務している施設や業務の内容を届けるよう義務づけている。厚労省はこの申請に基づき、医師資格の有無を名前などで検索できるシステムを07年に導入した。 ただ、このシステムで確認できるのは、入力した氏名の人物が医師免許を取得しているかどうかだけだ。勤務先などは表示されないため、確認したい人物と同姓同名の人が表示されているだけの場合もある。 厚労省は12年、採用時に医師免許や卒業証書の確認を医療機関に徹底させるよう、都道府県宛ての通達を出した。担当者は「医療機関が本当に医師かどうかを確認するなら、やはり医師免許の原本を提示してもらうのが確実だ」と話している。 【川地隆史】