若者にも被害急増の「ニセ警察詐欺」 知人の体験で感じた身近な脅威

「詐欺に遭いかけた」。知人で京都市内に暮らす大学院生(27)からLINEで連絡があったのは、6月のことだった。 事件担当記者として、増加する詐欺被害について取材してきた。正直、「若い自分には関係ないだろう」と、どこか他人事に感じていた。だが、知人の体験から「誰でも被害に遭うかもしれない」と気づかされた。 知人が巻き込まれたのは、全国で急激に被害が広がる「ニセ警察詐欺」。警察官などをかたって、捜査と称して金銭をだまし取ろうとする手口だった。知人から犯人側とのやりとりや当時の状況などを聞き、20~30代にも被害が多いことを伝える記事として紹介した。 掲載後も、被害は増加する一方だ。警察庁によると、1月~10月の特殊詐欺の被害額は全国で約1096億7千万円(2万2657件)に上り、前年同期比で約607億9千万円増加した。被害額のうち約7割に当たる約748億6千万円(8681件)がニセ警察詐欺による被害だった。 記者が暮らす香川県も例外ではない。11月末時点で特殊詐欺全体の被害額は約11億6300万円で過去最悪。うちニセ警察詐欺による被害は約8億4600万円(123件)だった。 10月には、80代の女性が警察官を名乗る男から「暴力団員を逮捕したら、あなた名義の通帳と携帯電話が発見された」などとうそをつかれ、現金約2300万円をだまし取られた。県警捜査2課によると、女性の口座にはわずか数百円しか残らなかったという。 市民から全財産に近いお金をだまし取る卑劣な犯罪が横行する現状に、関係機関も対策に力を入れている。高松地検は12月、特殊詐欺被害防止のための特設ページを開設した。注意喚起のポスターや漫画のほか、手口を体験するゲームもある。地検の検察事務官が作ったのだという。 被害をどう防ぐか。報道機関という立場からも何かできることはないか、自分事として考えていきたい。(木野村隆宏)

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