16歳の少女はなぜ餓死したのか 「人質司法」が奪った命

2026年6月17日、一人の母親が国と兵庫県を相手取り、神戸地裁に提訴した。請求額は約1億921万円。だが母親が取り戻したいのは賠償金ではない。なぜ娘が死ななければならなかったのか、その理由が知りたいのだ。 亡くなったるなさん(仮名)は当時16歳。母親が運営する兵庫県内の障がい福祉事業所で働いていた。2025年2月、施設のイベントで、ある利用者が自分の手を噛んだり別の利用者に噛みつこうとしたのを止めようと、その利用者のあごに手を添えた。利用者を守るための行為だった。 ところが約2カ月後、イベントに参加していた別の利用者が、虐待があったと行政に報告する。防犯カメラもなく、警察も検察も他の参加者から話を聞いたり、施設を捜索したりすることもないまま、兵庫県警明石署が同年6月、突如としてるなさんを暴行容疑で逮捕してしまう。 言うまでもなく16歳は未成年であり、本来は手厚い保護の対象だ。少年法では検察が勾留を請求できるのは「やむを得ない事由」がある場合に限られる。にもかかわらず検察は勾留を請求し、裁判所はこれを認めてしまう。しかも、勾留は2度延長され、計18日間に及んだ。接見禁止までつき、るなさんは母親とも引き離された。 密室の取調べで無実を訴え続けるるなさんに、捜査員は「本当はやったんだろう」と自白を迫り、「少年院に行きたいのか」と脅したという。身柄を握り、家族から切り離し、自白するまで圧力をかけ続ける。国連などの国際機関から拷問とまで認定されている、人質司法の典型だった。 しかし、16歳の心身はこの仕打ちに耐えられなかった。急性ストレス障害とPTSDを発症し、食事が摂れなくなった。逮捕前に37.5キロあった体重は、釈放翌日には27.7キロまで落ち、車椅子が必要なほど衰弱していた。 るなさんは結局、不起訴になった。はじめから起訴できるような事件ではなかったのに、検察は弁護士が尋ねても不起訴になった理由さえ説明していない。そしてるなさんは、2025年12月14日、低栄養状態で亡くなった。死の約2週間前、体重は20キロまで減っていた。 るなさんの死後、虐待を報告した元利用者が、自分の申告は大げさだったと打ち明けた。知的障害のある元利用者の証言の裏付けを取ることもせず、警察と検察は16歳を逮捕し、勾留し、自白を迫った結果、一人の尊い命が失われた。 原告代理人の向井義博弁護士は17日の会見で、るなさんが最も悲惨な形で人質司法の犠牲になったと語った。 逮捕、勾留、取調べは、市民の自由を奪う巨大な国家権力の行使だ。その力は本来、市民を守るために与えられているもののはずだ。それが、守られるべき16歳に向けられ、結果的に命を奪った。なぜ検察は裏付け捜査もないまま、知的障害のある利用者の話だけを根拠に未成年のるなさんを逮捕し、18日間も勾留したのか。るなさんの母親は無論のこと、国民に説明する義務があるのではないか。 検察の説明責任が問われている。 【ビデオニュース・ドットコムについて】 ビデオニュース・ドットコムは真に公共的な報道のためには広告に依存しない経営基盤が不可欠との考えから、会員の皆様よりいただく視聴料(月額1100円)によって運営されているニュース専門インターネット放送局です。(www.videonews.com) (本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする