【ソウル時事】韓国で5月、帰宅中の女子高校生が見知らぬ男(23)に刺殺された事件を巡り、容疑者の父親である現職警察官が、同僚の捜査チームと協力して証拠隠滅を図った疑惑が明るみに出て、社会に衝撃を与えている。 10月には現在の検察が廃止される。「検察の補充捜査がなかったら闇に葬られるところだった」と論争が拡大している。 事件は南西部・全南光州で発生し、容疑者はすぐに拘束された。警察は一般殺人容疑で検察に送致したが、その後、父が容疑者の性的嗜好(しこう)を示す物品や強姦(ごうかん)目的との関連が疑われる結束バンドなど容疑者の所有物を廃棄・隠匿していたことが判明。息子の罪状を軽くしようとした可能性が指摘されている。 検察は量刑が一般殺人よりはるかに重い強姦目的の殺人罪を適用し起訴した。今月に入り、捜査チームが父と捜査状況を共有して証拠隠滅に協力したほか、「強姦目的」につながる物証を黙殺した疑惑が次々と表面化。8日に捜査チーム長が逮捕され、地元警察関係者への捜査が続いている。 不正を暴いたのは、警察からの資料に疑問を抱いて補充捜査をした検察だ。だが、検察は起訴と公判だけを担う公訴庁に改編されることが昨年決まった。革新系与党「共に民主党」は、補充捜査を含め公訴庁から一切の捜査権を奪う方針で、詳細を定める刑事訴訟法改正を急いでいる。 検察を巡っては、革新系の盧武鉉元大統領が取り調べ後に自殺するなど政権の意に沿った無理な捜査が批判されてきた。革新系にとり恨み骨髄の相手で、権限を奪って弱体化させたいのが本音だ。しかし、今回の事件を受け、法曹界から「警察の捜査をけん制し空白を埋めるシステムが不可欠」(大韓弁護士協会)と、少なくとも一般事件では公訴庁に補充捜査を認めるべきだとの声が高まっている。政府・与党の一部からも慎重論が出始め、検察廃止が約3カ月後に迫る中、制度設計は流動化している。