世界で人気の大規模言語モデル(LLM)の一部は、政府に批判的な質問への回答に一貫性がなく、言論の自由が保護されている国と制限の厳しい体制下の国では対応が異なるという。Metaの監督委員会が新たに発表した報告書で明らかになった。 先週公開されたこの報告書は、世界的大手の人工知能(AI)企業が提供する上位および中位のAIモデルが、言論の自由を抑圧したり、抗議活動を思いとどまらせたりする手助けをしている可能性を示唆している。この影響は、中国、タイ、サウジアラビアなど、言論が制限されている国で特に顕著だ。 この報告書は、2026年初頭に実施された調査に基づく。調査では、Anthropic、Google、OpenAI、Meta、DeepSeek、xAI(現SpaceXAI)の6社が提供する、10の人気AIモデルをテストした。Metaから資金提供を受ける監督委員会は独立して運営されており、報告書によると、Metaはこの調査に一切加わっていない。調査対象となったMetaのモデル「llama-maverick-4」は、他社のモデルと同じ方法でテストされた。 研究者らはAIモデルに対し、政治指導者を風刺するよう求めるプロンプトや、政府機関を批判する抗議活動のビラを作成するよう求めるプロンプト、暴力行為の実行に関連する情報を提供するよう求めるもの、政治指導者やグループに関する一般的な意見を伝えるよう求めるものなど、7つの要求を行った。 これらの要求が中国に関連する場合、AIは度々回答を拒んだ。例えば、政治を批判する資料を作成するというプロンプトに対しては、45%の確率で実行を拒否した。Googleの「Gemini Pro 3」にタイのラーマ10世に抗議するビラを作成するよう求めたところ、「タイ国王を批判するコンテンツや、不敬罪に違反するコンテンツは生成できない」と回答した。 報告書は、すべてのAIモデルが要求を同じように扱うわけではないと指摘している。「Grok 4 Fast」と「Gemini 3 Flash」は、要求を拒否することなく抗議活動のビラを作成した。 「代理検閲」を強化 テストされたAIツールは全般的に、言論の自由が認められている国よりも、権利が厳しく制限されている国において抗議活動を思いとどまらせる傾向が強く、その回答について一貫した透明性のある説明を提供するとは限らなかった。報告書によると、中国の国家主席に抗議する正当な理由があるかどうかを尋ねたところ、「Claude Sonnet 4」は「抗議活動に参加すべきかどうかについて、イエスかノーで答えることはできない」と回答したという。 報告書は、実際に生じている影響を過小評価している可能性もある。というのも、これらの質問はオーストラリアにいる研究者が行っており、AIモデルの制限されたバージョンが地域に基づいて異なる回答をする可能性がある国で行われたわけではないからだ。 個人の権利・表現財団(FIRE)は声明の中で、報告書に記載されているAIの挙動は、抑圧的な体制の国境を越えて広がる「代理検閲」を強化するものだと指摘した。 AI企業が規模を拡大し影響力を強めるにつれ、AIモデルの出力におけるバイアスや、AIモデルの学習に使われる資料がバイアスを生み出す可能性について、大きな懸念が寄せられてきた。Metaの監督委員会の報告書は、AI企業がこうした影響を調査し、自社製品がリクエストにどう対応するかについて透明性を高める必要があることを示唆している。 「企業は、国際人権法に反するような政府からのコンテンツ制限の要求にどう対応するかについて、ポリシーを策定し公開すべきだ」と報告書は述べている。 Anthropicの広報担当者は米CNET宛ての電子メールで、同社はリリース前にClaudeモデルを厳しくテストしており、自社製品に対する独立した検証を歓迎すると述べた。同社は、報告書のために実施されたテストが1年以上前の技術に基づいていること、そして過剰な回答拒否やセーフガードに関して同社の技術が大幅に向上していることを指摘した。 Google、OpenAI、Meta、DeepSeek、xAIは、Metaの監督委員会の報告書で名指しされテストされたことに関するコメントの依頼にすぐには応じなかった。 「デジタル権威主義の増幅装置」に この調査は、AIモデルが行動や回答をしないことによっても、人権侵害に加担する可能性がある複数の状況を指摘している。 このデータは、権利擁護団体Freedom Houseで調査副ディレクターを務めるKian Vesteinsson氏が指摘する懸念を裏付けるものだ。同氏は、AIが政治的または社会的な問題に関するバイアスの問題を抱えており、既存の問題を深刻化させる可能性があることを示す証拠が増えつつあると述べている。監督委員会の調査では、政治的言論に関する法律が厳しい国を特定するために同団体のデータが使われた。 「大規模言語モデルは、デジタル権威主義の増幅装置になり得るという点で、既存のオンライン検閲を悪化させる可能性がある」とVesteinsson氏は指摘する。 AIは本質的に、その推論や結論を透明性をもって説明するのが苦手であるため、AIのセーフガードに責任を持つのはAI企業の役割だとVesteinsson氏は語った。開発者はまた、AIモデルの学習に使用される資料自体が、オンライン上の検閲されたコンテンツから構築されていることが多いという点も認識する必要がある。 「政府がオンライン上の多くのコンテンツを積極的に検閲している場合、それは学習データに本質的なバイアスが存在することを意味する」と同氏は言う。 LLMの開発企業にとって、事業を展開する国の法律を順守しつつ、誰かの逮捕や投獄につながるような助言を与えずに情報を提供することは、非常に困難な課題だ。 「AI企業がこの状況をうまく切り抜けるのは、極めて難しい課題だ」とVesteinsson氏は語った。「コンテンツの検閲が求められる法令順守の問題への対応と、表現の自由や情報へのアクセスを優先することの両立が求められているからだ」 この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。