(CNN) 米コネティカット州の民家で20年以上も監禁され、今年2月に自ら放火して脱出した男性(32)が15日、広報を通じて初の談話を発表した。男性は継母によって長年にわたる虐待を受けていたとされる。 男性は自分を「S」とだけ呼んでほしいと望み、「自分の名前は自分で選ぶ。自由になった自分にとって、これが最初の選択になる」と力を込めた。 男性は今年2月17日、コネティカット州ウォーターバリーにある自宅の小部屋に自らライターで火をつけた。消防救急隊を呼ぶのが目的だった。すすまみれの姿で救出された男性は身長は約175センチ、体重は30キロほどしかなかった。 ウォーターバリーの「恐怖の家」と呼ばれたこの事件は全米の注目を集めた。男性は「自分の人生を取り戻すため、自分のことがどう語られるかについて自分の意見を言うために」、声を上げることにしたと訴える。 継母のキンバリー・サリバン被告(56)は誘拐や暴行、不法監禁などの罪に問われ、無罪を主張している。逮捕状によれば、同被告は男性が11歳だった時から監禁を続けていた。 サリバン被告は保釈が認められたものの、GPS監視装置の装着を命じられて自宅拘禁されている。 「私は20年以上にわたる監禁と家庭内暴力を生き延びた」「11歳で4年生から連れ去られて以来、2カ月前に31歳でわざと火をつけて自由になるまで、自宅で囚(とら)われていた」。男性はそう続ける。 その上で、消防や警察、自分を虐待した相手の摘発に尽力してくれた関係者全員に感謝すると述べ、ドメスティックバイオレンスの被害者支援施設やクラウドファンディングを通じて寄付してくれた人にも謝意を表した。 「救急隊が自分を家から運び出してくれたあの日よりも、ずっと良くなり、強くなった」として医療従事者にも感謝の気持ちを伝えた。 さらに、自分のことを知っている人は捜査に協力してほしいと訴える一方で、「これは単なるストーリーではない。自分の人生だ」として一般の人やマスコミにはプライバシーの尊重を求めている。 警察の調べによると、男性は物置に閉じ込められて鍵をかけられ、毎日サンドイッチ2切れと少量の水しか与えられなかったと話していた。 10代の頃は1日22~24時間、自室に閉じ込められ、排泄(はいせつ)の際はストローを使って窓から尿を外に流す工夫をしていたという。 虐待は監禁される前から始まっていた可能性もある。警察によると、4年生になるまでには夜中に食べ物をあさってサリバン被告に閉じ込められるようになった。やがて学校にも行けなくなり、外出が許されるのは家事をこなす時だけになった。 州と警察が安全確認のため2004年に2回訪問した際も、虐待とされる行為は発見できなかった。 24年1月に父親が死亡すると、男性の面倒を見るのはサリバン被告のみになった。男性によると、サリバン被告の支配はそれから一層強まったという。 父親の死後、飼い犬を家の裏に放す時しか家から出られなくなった。それも1日に1分程度だったという。 その後の家宅捜索では、男性の自室のドアのベニヤ板と錠が見つかり、監禁されていたという男性の証言が裏付けられた。 15日に発表した談話の中で男性は、回復に向けた一端を垣間見せている。 「32歳を祝って初めて誕生パーティーができたことに感謝します」