“あおり運転”前年から2割増加 加害者の心理は「むしろ被害者だと…」

あおり運転はなぜ起きるのか。加害者1000人の証言からその共通点が見えてきました。 ■“あおり運転”加害者の心理は 前を走る車が急ブレーキ。先月下旬、長崎市内で撮られた映像。この赤い車、前の白い車に対してもかなり車間距離を詰めているように見えます。 撮影者 「僕がハンドルを握っていたわけではないが、それでもものすごい恐怖を感じた」 撮影者はこの後、警察に通報したということです。 各地で相次ぐ「あおり運転」。先週、逮捕者も出ています。 千葉県内の国道で突然、急ブレーキをかけたり、進路をふさいだり、逆走して向かってきたり…。 この軽自動車を運転していたのは、49歳の男。取り調べに対し、容疑を否認しています。 ■“あおり運転”なぜ起きるのか? あおり運転を巡っては2017年、東名高速で起きた一家4人が死傷した事故をきっかけに警察による取り締まりが強化され、2020年の道路交通法改正にもつながっています。 それでも、今もなお後を絶たないのが実情です。 ■バスに詰め寄り大声で“威嚇” 九州では、走行中の高速バスが複数のカメラで危険な運転を捉えていました。 白い乗用車がバスの前方に割り込むと、急減速。バスの運転手は急ブレーキを踏まざるを得ません。 運転手(無線) 「すいません、110番お願いします」 警察への助けを求めたその直後でした…。車が急停止し、バスと衝突。間髪入れずに、乗用車の運転手はバスに詰め寄り大声で威嚇。この後、危険運転致傷の疑いで逮捕されました。 ■身乗り出し挑発?危険な運転 今年1月、札幌市内を走行中の大型のタンクローリーから撮られた映像です。 水色の車が追い越しをしたそのすぐ後ろ、白い乗用車が間を縫うように割り込んできました。このまま立ち去るかと思いきや、急減速。その後、運転席が見えるほどの距離に近付いてくると、こちらを振り向き、さらに、窓から身を乗り出し挑発するような動きも見せました。 タンクローリーの運転手 「自分はタンクローリーの大型車なので急ブレーキも踏みたくない。ああいう運転をされたら、とても怖かった」 当時、タンクローリーは2万リットルの灯油を運んでいました。一歩間違えば、大惨事となっていた可能性もあります。 なぜあおられたのか、分からないケースもあります。 ■軽トラ抜かした1分後にまさか 長い直線道路、ウインカーを出して左に寄せた軽トラックを追い越します。そのおよそ1分後でした…。 先ほど追い越した軽トラと似た車が行く手を阻みます。さらに、その後、軽トラは何事もなかったように走り去っていきました。 ■“あおり運転”加害者1000人の声 去年行われた2000人以上のドライバーを対象としたある調査では「あおり運転をされた経験がある」と答えた人が全体の70%以上に上りました。前年に比べ、およそ2割も上昇したといいます。 なぜ人は、あおり運転をしてしまうのでしょうか…。 「あおり運転」を研究 明星大学心理学部 藤井靖教授 「被害者に話を聞くと、98%は追い越し車線で被害を受けている」 10年以上前からあおり運転の研究をしている心理学者の藤井靖教授に聞くと…。 藤井靖教授 「『あおり加害』というのは、8割くらいの人が自覚がない。6割の人は『むしろ自分があおられているんだ』と認識」 ■あおり運転 加害者の心理 これまでに1000人以上の加害者に話を聞いたところ、その多くが「むしろ被害者だ」と感じていたそうです。 藤井靖教授 「『自分があおられているから仕返しをしてやったんだ』とか、『優しさで教えてあげたんだ』とか。そういう(あおり)行為をしてその人(被害者)が運転が嫌いになったり、運転しなくなれば、『健全な道路交通状況につながる』と考えている人も少なくない」 では、なぜそのような心理に陥るのか…。 藤井靖教授 「あおり行為というのは『点』ではなくて『線』。ある一点で怒りがガッーと上がって起きるというより、加害者が運転してきたそれまでの履歴で、怒りや敵意がたまっていってあるポイントであおり行為になるのがほとんど。例えば(道が)混んでいて、渋滞でその後すいたタイミング、やっとスムーズにいけると思ったら前の車がノロノロ走っていて自分の思い通りにいけないとなると一気にその怒りが爆発してしまう」 特に、進んだり止まったりが多い市街地や混雑する車の合流地点・交差点などはフラストレーションをためやすいといいます。 一方で、「そんなことが?」と思うような理由であおり運転をした加害者も。例えば…。「スポーツカーなのに遅かった」「運転者の髪型が気に食わない」「花粉症でキツいのを忘れるため」。 あらゆることがきっかけになる、あおり運転。もし、あおられてしまったら…。対処法を聞きました。 藤井靖教授 「大事なのは3つの『と』です」 3つの「と」。1つ目が「捉える」です。 藤井靖教授 「後ろの車が車間距離が近いとか蛇行して付いてきてるとか、捉えることで距離を取るなど、事前策が取れるといい」 2つ目が「止まる」です。 藤井靖教授 「一般道ならまず路肩に止まる、加害者を先に行かせる、早い段階で運転を止めることは大事なこと」 そして、3つ目が「録る」です。 藤井靖教授 「記録を残す意味ではドライブレコーダーは大事。自動的に録画ができると対処としては望ましい」 スマホで撮影しようとすると、相手を逆上させるリスクがあるためボイスレコーダーで音声を記録しておくことも効果的だということです。

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