「合理性肯定できない」 公安部の独自解釈に1審から踏み込んで判断 大川原控訴審判決

「判断に基本的な問題があった」「合理的な根拠が欠如していた」-。大川原化工機(横浜市)の噴霧乾燥機輸出に関する捜査の違法性を認定する判決が28日、東京高裁で言い渡された。太田晃詳(てるよし)裁判長は1審同様、警視庁公安部などの捜査不足を指弾した上、経済産業省令の独自解釈に基づいて逮捕に至った点にも、1審よりも踏み込んで言及。捜査の正当性そのものにも疑問を投げかけた。 事件を巡っては、同社の噴霧乾燥機が、省令が定める「滅菌または殺菌できるもの」として、輸出規制に該当するかどうかが捜査の焦点となった。明確な定義はなく、控訴審判決などによると、公安部は細菌を1種類でも死滅させれば「殺菌」に該当するという独自の解釈に基づいて捜査を行った。 1審東京地裁はこの解釈について「不合理とはいえない」と判断。一方、同社側は控訴審に経産省と公安部のやりとりを記録したメモを提出するなどし、「(公安部が)見解をねじ曲げさせた」と主張した。 控訴審判決は、経産省が当初、同社製品が輸出規制に該当するかについて「否定的だった」とし、経産省はその後容認に転じたが、だからといって「(解釈の)合理性を客観的に説明できる状況になったともいえない」とした。 この解釈を前提として逮捕したことについて「合理性を肯定することはできない」と指摘。この点と合わせて、同社の噴霧乾燥機に殺菌しきれない部分があるとの情報があったのに、追加捜査せずに同社社長らに嫌疑があるとしたのは「客観的に合理的な根拠が欠如していた」として、1審に続いて違法だと結論付けた。 都側は、同社側が殺菌できないことを証明するために実施した70回以上の実験を、機体を持っていない公安部が行うのは不可能などと主張したが、認められなかった。 同社側が主張した「(公安部が)ねじ曲げさせた」とする主張について控訴審判決は採用しなかったが、捜査機関にとって1審よりも厳しい認定を突き付けられたといえそうだ。(橘川玲奈)

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