子供を犯罪から守るためのGPS(衛星利用測位システム)機器が悪用されるストーカー事件が発生した。男が一方的に好意を募らせた相手の自転車にGPS機器をひそかに設置し、位置情報が男に通知されるようにしていたのだ。令和3年にストーカー規制法の対象となった位置情報の無断取得。しかし、地図アプリケーションを用いれば簡単に位置情報の共有ができ、機器の小型化も進む。警察当局は年々精度が向上する技術への警戒を強めている。 4月上旬、大阪府内のマンションで、帰宅した住人の20代女性が何者かに背中を突き飛ばされて階段から転落。さらに顔を踏みつけられて全治2週間のけがをした。 大阪府警は5月、殺人未遂容疑などで男(46)を逮捕。府警によると、男は女性がアルバイトをしている小売店の客だった。交際関係は過去に一度もなく、SNS(交流サイト)でのやりとりでは、男がたびたび食事に誘うものの、女性に断られていた。 男は殺意などを否認しつつ、階段から突き飛ばしたこと自体は認め、「SNSをブロックされた腹いせにやった」と供述しているという。 関与が浮上するきっかけの一つとなったのがGPS機器だった。捜査関係者によると、女性の自転車には、気付かぬ間に子供の見守り用GPS機器が取り付けられていた。製品のホームページによると、子供が学校や塾といった指定の場所に到着すると、保護者のスマートフォンに通知が届くように設定できる。寄り道を防止するためにアプリ上の地図で移動経路も確認でき、通ったルートは数カ月間、保存される。 男はこうした機能を悪用して、女性が自宅やアルバイト先に近付くと通知が届くようにしていたとされ、すでにストーカー規制法違反罪で起訴されている。 令和3年8月施行の改正ストーカー規制法により、相手の承諾なくGPS機器を取り付けたり位置情報を取得したりすることが規制対象となった。GPSの悪用は決して珍しくなく、警察庁によると、4年は404件、5年は486件の被害が発生している。 4年に神奈川県警が同法違反容疑で摘発した事案では、男が知人女性の転居後の住所を調べるためにGPS機器が入った封筒を郵送。前住所に送った封筒入りのGPS機器が転送されることで、新住所を把握しようとしたとみられる。