(CNN) イランでスパイ容疑による逮捕者が相次いでいる。イスラエルの情報機関モサドの浸透の度合いを巡り、懸念が高まっていることが背景にある。 イスラエルの攻撃が13日に始まって以来、イラン首都テヘランでは28人が逮捕され、イスラエルのスパイとして告発されている。16日には、2年前に同じ容疑で逮捕された男が絞首刑に処された。これはイスラエルへの協力を考える者へのメッセージと思われる。 イラン政権はまた、「シオニスト政権を支持する」記事をオンラインで共有したとして、全国で数十人を逮捕した。「社会の心理的安全」を乱したためとしている。 一連の逮捕劇の背景には、イラン政府の動揺がある。イスラエルの未曽有の攻撃に先駆け、モサドの工作員がイラン国内に武器を秘密裏に運び込み、それを使ってイランを内部から攻撃していたことがこのほど明らかになっていた。 それ以来イラン側の疑念は高まり、イラン情報省は国民に不審な行動を報告するよう求めた。イスラエルの協力者を見分ける方法についての指針も発表している。 同省のある声明では、マスクやゴーグルを着用した見知らぬ人物への注意を促す。ピックアップトラックを運転し、大きな荷物を持ち、軍事エリア、工業地帯、住宅地周辺で撮影している人物にも警戒を呼びかける。 他にも、イランの治安当局に近い国営「ヌール・ニュース」が掲載した広告では、「夜間でもマスク、帽子、サングラス」を着用している人や、「宅配便で頻繁に荷物の配達を受ける人」を疑いの対象としている。 この広告は、「叫び声、金属機器の音、たたき続ける音など、家の中から聞こえる異常な音」や、「日中でもカーテンを引いている家」を通報するよう求めている。 国営メディアに警察が掲載したとみられる別の広告では、最近家を借りた家主に対し、すぐに警察に通報するよう勧告している。 一方、イランのジャーナリストたちは、路上での写真撮影を禁じられているとCNNに明らかにした。 イランの国営メディアによれば、ここへ来てイラン革命防衛隊の準軍事組織バシージが夜間パトロールに投入された。イスラエルの浸透を受けて「監視」を強化するためだという。イランでは近年、いわゆる道徳警察による若い女性の拘束死事件に端を発した反体制デモが社会を揺るがしたが、バシージはこうした抗議デモの取り締まりに当たったのと同じ部隊となる。 16日のビデオ声明でイラン警察のトップは、「裏切り者」に名乗り出るよう促し、「敵にだまされた」と気づいた者はより寛大な処遇を受け、イランから「名誉を与えられる」かもしれないと示唆した。一方で名乗り出ず逮捕された場合は、敵のシオニストが現在味わっている教訓を思い知ることになるとした。 イラン司法当局のトップは、イスラエルに協力したとして告発された者たちを「速やかに」処罰するよう求めた。 イラン政権が疑心暗鬼を募らせているのは、13日の先制攻撃に先立ち、イランに武器を運び込んだモサドの作戦の詳細が明らかになったからだ。 イスラエル政府関係者によれば、工作員はイラン国内に自爆型のドローン(無人機)を発射する拠点を設置し、それらのドローンを使ってテヘラン近郊のミサイル発射装置を狙ったという。 精密兵器も同様に持ち込まれ、地対空ミサイルを標的として使われた。こうした動きを受けて、イスラエル空軍は13日未明、200機を超える航空機による大規模爆撃を遂行することができた。 モサドがイラン国内で集めた情報も、イスラエル空軍がイランの司令官や主要な科学者を標的にすることを可能にしていた。 イランのメディアによれば、政府はその後、テヘラン州の都市レイでイスラエルの作戦に使われたとされる機器を押収した。これには200キロの爆薬、数機の自爆用ドローン、発射装置、ドローンの製造に使われた機器などが含まれるという。 国営ファルス通信が公開した映像には、ドローンの部品やその他の装備を収めた建物が映っていた。