2022年、当時20代前半だったナギサさん(仮名)は自宅で男児を産み落とした。死産だった。同居の母親を含め、周囲の誰にも相談できない。遺体は公園に埋めたが、後に死体遺棄罪で逮捕され、有罪となった。 望まぬ妊娠をしたものの、家庭や行政に助けを求められず、孤立出産するケースが各地で後を絶たない。赤ちゃんをどうしていいか分からず、乳児を遺棄した女性が、高校生や外国人の技能実習生だったというケースも。精神的に追い詰められ、命の危険を顧みずに産んでも、育てられないため遺棄し、犯罪者にされる。 一方で、男性側は特定されなければ、罪にも問われないことが多い。なぜこんな不平等が続くのか。調べていくと、「自己責任」ではすまされない、妊娠・出産を巡る日本の制度上の欠陥が見えてくる。(共同通信=国枝奈々) ▽行き場失い 妊娠のきっかけは「パパ活」だった。 「15歳で始めた。話し相手がほしくて、最初はお金ももらっていなかった」 幼少期に両親が離婚。母親の転勤で各地を転々とした。転校を繰り返し、小中学校になじめず、いじめも受けた。高校1年で退学。心のよりどころは、動画サイトで活躍するアイドルグループだった。