【】イラン空爆、「爆弾」と「交渉」の落とし所

ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――6月13日にイスラエルが空軍戦闘機200機からの330発の爆弾・ミサイルで、イランの核施設など100ヵ所に同時多発攻撃しました。一方のイランはすぐに100機の無人機、さらに数百発のミサイルで反撃。イラン・イスラエルで大きな動きがありましたが、トランプ米大統領の中東訪問では、イスラエルには行きませんでしたよね? 佐藤 それは、中東でイスラエルを項に入れた複雑な方程式を作りたくなかったからです。すでにアメリカとイスラエルとの間で方程式ができているから、今回は簡単に動けてたわけですよね。 ――なぜ、いまイスラエルはイランを攻撃したのですか? 佐藤 引き金を引いたのはイランです。IAEA(国際原子力機関)の勧告を無視して、ウラン濃縮施設をもうひとつ作ると明言しました。 中東はいま、非常に危ない形で均衡が保たれています。 イスラエルでは一昨年の10月7日に、ハマスによる奇襲攻撃がありました。それでイスラエルとしては、まずは二度とこうしたことが起きないように動いたわけです。つまり、ユダヤ人であるという属性だけでユダヤ人を殺すような敵対勢力をなくすため、イスラエル周辺からテロリストたちを全部除去することにしたのです。そして始めてみたら、思ったより上手くいってしまったわけですよ。 ――確かに成功しました。 佐藤 そう、レバノンのヒズボラ掃討作戦は上手くいって、シリア・アサド政権まで倒れました。 では、ハマスへの対応が上手くいってないのはどうしてか? これは、ハマスがイスラエル本国を攻めて来ることを想定していなかったからです。だから、イスラエルに対応マニュアルが全然なくて、場当たり的な対応になってしまっているからですね。 ――確かに。

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