「不倫」「児童ポルノ」「妊娠」あらゆる弱味をネタに…マッチングアプリが入り口の「美人局の事件簿」

「とんとん拍子で女性とホテルに」……そして悲劇が 6月27日、名古屋市のホテルで32歳の男性が殺害された事件で、無職の20歳の男が強盗致死罪で起訴された。男は同月7日、知人の女(19)と一緒にホテルに入っていた被害者に対して「俺の妹に何してるんだ」などと因縁をつけたものの抵抗されたため、首を絞めるなどして殺害。現金約4万円が入ったバッグを奪ったとされる。 19歳の女は強盗殺人容疑で逮捕され、また二人に指示をしたとみられる無職の23歳の男も恐喝容疑で逮捕された。 逮捕された3人は、いわゆる「美人局(つつもたせ)」を企てたとみられている。被害男性は同僚らと酒を飲んだ後、現場のホテルの近くで女と出会ったばかりで「とんとん拍子で女性とホテルに行くことになった」と周囲に伝えていたという。 美人局は昔からある犯罪だが、一向になくならない。この名古屋市の事件は逆ナンパがきっかけだったが、マッチリングアプリやSNS、メンズエステなどでも美人局の被害に遭うことがある。 本稿では近年特に増えつつある、マッチングアプリを使った美人局の手口を紹介したい。最初に取り上げるのは6月に広島県で風俗案内所店員の男(26)と無職の少女(17)、専門学校生の少女(19)が、恐喝などの疑いで逮捕された事件だ。 ◆「児童ポルノになるぞ」 17歳の少女がマッチングアプリで知り合った男性と待ち合わせ。合流すると、その場に案内所店員の男と専門学校生の少女が現れる。そして男性に対し「17歳になにしとるん」「児童ポルノになるぞ」と脅し、「所持金なんぼあるんや」「全部出せや」などと、現金3万1000円とキャッシュカード1枚を脅し取った。 さらに「児童ポルノは60万円の罰金だろ、足りない分はどうするんや」などと現金を要求。コンビニまで移動したが、ATMが利用時間外だったために金は引き出されずに済んだという。 この事件のように女性が未成年であるケースでは、被害者側にも公にされたくないという事情があるために、加害者の言いなりになってしまいがちだ。似たような弱みに付け込む手口に不倫関係を利用した「〝寝取られ〟美人局」や、次に紹介するような中絶費用や堕胎に対する慰謝料などを要求する「妊娠詐欺」がある。 ’24年5月22日から24日までの間に静岡市に住む30代の男性から、通院費や入院費の名目で3回にわたって計90万円をだまし取った疑いで、都内に住む30代の女2人が逮捕された。 女2人と被害に遭った男性はマッチングアプリで知り合い、同日に初めて顔を合わせホテルで性行為に及んだ。すると行為の最中に女らが突然「避妊具が外れた」と主張。現金を要求されたため、男性はその場で金を手渡し、2人と別れたという。 しかし、その後も女たちは「お腹が痛い」「病院に行かなければならない」といった難癖をつけ、無心を続けた。不信感を募らせた男性が被害届を提出し、逮捕に至った。女2人は友人同士だったという。 「未成年」「不倫」「妊娠」、どの詐欺であっても、相手の主張を鵜呑みにせず、まずは本当かどうか確認することが重要なのだが――美人局のために偽装結婚までしていたケースもある。 次に紹介するのは、夫の言い分によれば「〝恐喝行為を合法化するために〟結婚をしていた」という夫婦による美人局である。 ◆「妊娠したほうが(賠償金を)取れる」 美人局で男女4人から計800万を脅し取ったとして恐喝罪などの罪に問われた夫婦に対し、大阪地裁はこの6月、懲役3年6ヵ月の実刑を言い渡した。妻は元風俗嬢で、夫とは出会い系サイトで知り合っていた。妻が勤務していた風俗店のスカウトだった人物が美人局を計画し、この男の斡旋で夫婦は籍を入れたという。 夫は「妻への愛情はなかった」と裁判で証言した。 この美人局夫婦の手口は、妻がマッチングアプリで知り合った男性を自宅に誘い、性行為中に夫らが複数で乗り込んで脅すというもの。殴るしぐさを見せたり、「人の家庭で何しとんねん」「不倫の慰謝料の相場、今調べてみろ」「会社にも行くからな」などと凄んだという。 夫婦は反撃を防ぐために外国人を用心棒として雇うなど周到に準備していた。妻は元風俗店スカウトから「妊娠したほうが(賠償金を)取れる」と言われ、避妊しないように指示を受けていたという。 美人局に限らずマッチングアプリを入り口に犯罪に巻き込まれたという事例は枚挙にいとまがない。「指定された店に行ったら大量の酒を注文させられて45万円を請求されたうえ、存在しない予約のキャンセル補償金として200万円と金のネックレスをだまし取られた」というケースは、近年流行りのぼったくりの手口だ。 その他にも「インターネット通販ショップの経営を勧められて約1200万円をだまし取られた」、「27歳の風俗嬢が『皮膚の治療費が必要だ』と嘘を言って50代の男性から15万円をだまし取った」などだましの手口はいくつもある。 マッチングアプリは見知らぬ異性との出会いのために利用するという特性上、どんな相手に出会ってしまうのか分からない。素晴らしい異性と巡り合える可能性もあれば、美人局などの犯罪に遭遇してしまう危険だってあるのだ。 【後編】では、SNSやメンズエステでの美人局などまだまだあるだましの手口について、生駒氏が解説している。 【後編】美人局で稼ぐためにメンエスを開店した例も…多様化する手口で被害者が続出する「美人局」の現在 取材・文・写真(2~4枚目):生駒明

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