39年前、福井市で中学3年の女子生徒が殺害され殺人の罪で服役した前川彰司さんの再審=やり直しの裁判で名古屋高裁金沢支部は18日、無罪を言い渡しました。 懲役7年の判決を受け、服役した前川彰司さん(60)。事件発生から39年、18日に無罪が言い渡されました。 1986年3月、福井市で中学3年の女子生徒が包丁で殺害され、事件の1年後、当時21歳だった前川さんが逮捕されました。前川さんは捜査段階から一貫して無罪を主張。 去年10月、2度目の再審請求で名古屋高裁金沢支部が裁判のやり直しを認めました。 ■再審請求から20年以上 前川さんに無罪 18日午後2時すぎ、名古屋高裁金沢支部で、増田啓祐裁判長は検察側の控訴を棄却し、前川さんに無罪を言い渡しました。判決を言い渡されると前川さんはまっすぐ前を向き、その後は軽く頷きながら裁判長の声に耳を傾けていました。 増田裁判長は「服に血がついた前川さんを見た」とする知人の証言について、知人が自身の刑事事件の量刑を有利にするためうその供述を行った可能性があるとしました。その上で、捜査に行き詰まった捜査機関が他の関係者に供述を誘導した疑いが払拭できないとし、有罪の決め手となった供述はいずれも信用できないと結論付けました。 さらに、検察が証言の誤りを認識しながら裁判で明らかにしなかったことは「不誠実で罪深い不正といわざるを得ず、到底容認できない」と厳しく非難しました。 再審制度に詳しい成城大学の指宿信教授 「単に検察側の控訴理由を否定しただけでなく、通常審・控訴審での検察の活動を強く批判した。警察による関係者の誘導をはっきり書き込まれていた。そういう意味で高く評価できる。警察の違法・検察の違法をはっきり指摘しているので、前川さんは県・国に対して、国家賠償請求を提起できるのではないか」 ■取り返しのつかないこと「大変申し訳ありませんでした」 最後に増田啓祐裁判長は「前川さんのかけがえのない長い時間を服役という形で過ごさせたのは取り返しのつかないこと。大変申し訳ありませんでした。これからの前川さんに幸多からんことを心から願っています」と謝罪しました。 これに対し前川さんは、最初は下を向きながら噛みしめるように聞き、最後の方は裁判長を見つめ、涙ぐむように聞いていました。 判決後の前川彰司さんは「本当に心が空っぽ、感極まっている状態」と胸の内を明かしました。 検察側が来月1日までに控訴しなければ前川さんは事件発生から39年を経て無罪が確定することになります。