少女買春のエプスタイン事件 捜査資料にトランプ大統領の名前? 関税協議を急ぐ理由と指摘も 岩田太郎

「ノー、それはまったく関係なかった。そんなことを考えるのはあなただけだ」 訪英中のトランプ米大統領は7月27日、首を振りながらそう語って否定した。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長との関税交渉が妥結したと胸を張った直後、記者が「合意を急いだ一因にジェフリー・エプスタインの件があるのか」と質問したことへの返事だった。 「エプスタイン」とは、米連邦捜査局(FBI)とニューヨーク市警が2019年7月、未成年者の性的人身売買罪などの疑いで逮捕した米富豪のことだ。翌月、勾留中に死亡した。今、エプスタイン元被告の「亡霊」がトランプ大統領の権力基盤を揺さぶっている。 死亡の直後から「エプスタイン元被告が未成年女性をあっせんした“顧客リスト”があるはずだ」「元被告は顧客の大物政財界人らの秘密を知り尽くしていた。何者かが口封じのため、自殺に見せかけて殺したのではないか」とする陰謀論が広がっていた。とりわけ「MAGA(米国を再び偉大に)」に心酔する大統領の岩盤支持層には信じる人が多い。 トランプ氏自身も24年の大統領選に向けた運動期間中、リストに大物が多く含まれていると示唆し、「大統領に返り咲けばリストを含む捜査資料を公開する」と繰り返し述べていた。 ◇MAGA派も抗議 しかしトランプ氏自身の名も載っているという疑いが浮上した。今年5月に大統領とたもとを分かった米富豪のイーロン・マスク氏は6月、「捜査資料にトランプ氏が入っている。それが公開されない真の理由だ」と短文投稿サイトに書き込んだ。大統領が保身のために隠しているというのだ。 注目が高まる中、FBIは7月9日、「罪となり得る顧客リストは見つからなかった」と発表。元被告の死についても「自殺だった」と改めて結論付けた。これに対して大統領に近いMAGA派議員らも納得せず、抗議の声を上げているほか、報道が過熱している。例えば、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の特報によれば、米司法省は5月、「エプスタイン文書の多くに大統領の名が載っている」と大統領自身に伝えていた。

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