酒に酔って車を運転しようとしていた61歳の元裁判官が、膝の上に裸の女性が座ったために運転を誤り、自転車で通勤中の若い女性を轢いて死に至らしめた。男は現行犯逮捕された後拘留されたが、4万レアル(約107万円)の保釈金を支払い釈放された。法の番人としての職責を退いた元裁判官という社会的地位と高収入の経歴を持つ人物が関与した今回の事件は、酒気帯び運転に対する司法のあり方やその是非を巡り、社会的な議論を呼んでいると7月26日付G1などが報じた。 事件は7月24日朝、サンパウロ州内陸部のアラサトゥバ市で発生。元裁判官フェルナンド・アウグスト・フォンテス・ロドリゲス・ジュニオル容疑者は、女性を伴ってナイトクラブを出た後、自身が所有するピックアップトラックに乗り込み、スーパーマーケット近くに停車させた。その際、同乗していた女性が彼の膝の上に座ろうとしたところ、容疑者は誤ってアクセルペダルを踏み込み、車両が逆方向に急加速。自転車で通勤中のタイス・ボナッチさん(30歳)を轢いた。 タイスさんは骨盤骨折や重度の頭蓋内外傷など複数の外傷を負い、同日、病院の集中治療室に収容された。手術中も2度の心停止を起こすなど重篤な状態が続いた後、治療の甲斐なく7月26日未明に死亡が確認された。遺体は法医学研究所に送致され、検視が行われている。 警察発表によると、フェルナンド容疑者は事故現場で取り押さえられた際、言動が支離滅裂で運動失調状態にあり、強いアルコール臭を放っていたという。同乗女性は衝突後、衣服を身に着けて迅速に現場を立ち去っていた。容疑者は警察署へ連行され、自動車運転における過失傷害の容疑で現行犯逮捕された。その後、事件の重大性を鑑み、予防的拘留へと切り替えられ保釈金も設定された。 容疑者が釈放されたことに対して被害者家族は憤り、兄ウィリアンさんは「容疑者の釈放に非常に失望しているが、正義を信じている。彼は然るべき責任を取らなければならない」と訴えた。 事件は当初、過失傷害として届けられていたが、タイスさんの死亡を受け、過失致死に罪状が変更された。事件の裁判は現在、司法機密で詳細は未公表だ。 フェルナンド容疑者の弁護側は声明を発表し、「被害者遺族に深い哀悼の意と連帯を表し、事件発生以降支援を続けている。捜査の秘密保持命令により本人の公の発言は制限されているが、法的義務と敬意の表れである」としている。 容疑者はブラジル弁護士会(OAB)に登録された正式な弁護士で、退官後は全国で弁護士として活動可能だが、かつて勤務していたアラサトゥバの第一民事裁判所の管轄地では活動を制限されている。