機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件で、警視庁は7日、公安部の捜査の問題点や再発防止策をまとめた検証報告書を公表した。 立件に不利な情報が幹部にほとんど報告されず、幹部も現場の捜査方針を追認するだけだったとし、「組織として捜査の基本に欠けるところがあった」「捜査指揮系統が機能せず、大きな過ちにつながった」と総括した。 逮捕された同社の大川原正明社長(76)ら3人や関係者に対しては「多大なご心労、ご負担をおかけした」として謝罪した。 報告書ではまず、捜査の中核を担った外事1課5係の捜査の進め方に問題があったと指摘。5係長と直属の上司である管理官の2人は「事件検挙を第一」として、捜査方針にそぐわない部下の進言など、立件に不利となり得る情報に十分な注意を払わなかったとした。 上司の外事1課長は、公安部長ら幹部に報告して指揮を受けるよう2人に十分な指導をした状況もなく、幹部への報告は捜査の概要や予定だけの「形骸化」したものとなった。一方、幹部側も積極的に捜査状況を確認せずに報告を追認するだけで、「実質的に捜査指揮をしていなかった」と指弾した。 その結果、捜査方針の軌道修正が図られなかったとし、報告書は「公安部が組織として慎重に検討していれば、関係者の逮捕に至ることはなかった可能性は否定できない」と結論付けた。 捜査を違法と認定した国家賠償訴訟の控訴審判決で、捜査員の同社元幹部への取り調べが「偽計的」などと指摘された点については、「真摯(しんし)に反省しなければならない」とした。 これらの問題点を踏まえ、報告書は約20項目の再発防止策を提示した。重要事件について部長も参加する捜査会議を導入し、初期段階から捜査上の不利な情報や進展状況を報告させるほか、部下が上司の管理・指導の状況を評価する「多面観察」の制度を今秋にも実施する方針を示した。 報告書は、訴訟で「(事件は)捏造(ねつぞう)」などと証言した警察官3人にも言及。警視庁側がこれらの証言を「壮大な虚構」と表現したことについて、「職員が自由に意見を述べることを萎縮させかねず、不適切」として撤回した。