オートロック開閉式のマンション玄関で、先に入った住人に追随する形でドアが閉まる寸前に侵入する手口で悲惨な事件が神戸市で起きた。今回の事件によって顕在化した「オートロックすり抜け」という容疑者の手口とその対策について、防犯対策の講演などを続けている元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏に話を聞いた。 神戸市中央区のマンションで24歳の女性会社員が20日夜に刃物で複数回刺されて殺害された事件で、都内に住む谷本将志容疑者(35)が殺人容疑で逮捕された。同容疑者は被害者の勤務先近くで待ち伏せし、退社後に50分以上にわたって尾行。マンションに到着した女性に続いてオートロックのドアが閉まる前にすり抜けて侵入し、自宅がある6階に上がるエレベーター内で犯行に及んだとみられている。 谷本容疑者による若い女性が住むマンションの「オートロックすり抜け侵入」は常習化していた。事件3日前の17日に別の女性が住む同区のマンションでオートロック式ドアから同容疑者とみられる男が侵入していたことも報じられている。 さかのぼれば、2022年1-5月に同区のオートロック式マンションに複数回侵入し、女性(当時23)の部屋で首を絞めるなどの殺人未遂容疑で逮捕され、傷害やストーカー規制法違反罪などで執行猶予付きの有罪判決を受けていた。さらに、20年にも20代女性の住む同区のマンションでオートロックの扉をすり抜けて複数回侵入。兵庫県の迷惑防止条例違反容疑で逮捕された後、ストーカー規制法違反罪で罰金の略式命令を受けていたことも分かった。 いずれも共通点は「若い女性の住む神戸市中央区のオートロック式マンションの玄関ドアをすり抜ける」という手口。小川氏は「先に入った被害者の後からオートロックのドアに入る手口は『共連れ侵入』と言われます」と指摘した。 谷本容疑者が引き起こした事件により、クローズアップされた「共連れ侵入」という手口。オートロックのドアだけでなく、今回の事件で凶行の現場となった、建物内部のエレベーターで見知らぬ者と2人きりになることへの恐怖心が募る。その対策として、小川氏は「どうぞどうぞ作戦」を提案した。 「オートロックのドアを開けてエントランスに入った時、後から知らない人が入ってきた時、『この人と2人きりでエレベーターに乗りたくないな』と思ったら、自分のスマホを手にして、電話がかかってきたフリをしてください。『はい、もしもし。えっ、どうしたの?』などと話しながら、その相手に『どうぞ、どうぞ』と道を譲るような身振りをするのです。実際に『どうぞ、どうぞ』と言わなくてもいいですけど、そのようなニュアンスで手振りをし、『お先にどうぞ』という感じで頭を下げて会釈し、そのままオートロックの外に出る。それなら、たとえ、その人が偶然入ってきただけの同じマンションの住人だったとしても嫌な印象は与えませんから」 さらに、小川氏は「エレベーターに先に乗って、その後、知らない人が乗ってきた時も、同じように携帯に電話がかかってきたフリをして、『もしもし』と言いながらエレベーターから降りてください。その時も、『どうぞ、どうぞ』と言っても言わなくてもいいですが、とにかく頭を下げてそのまま降りていくということをすれば、一緒に乗らずに済むので有効です」と付け加えた。 ただ、この「どうぞどうぞ作戦」は急場をしのぐための“対処療法”的な防犯手段。根本的な対策は、加害者側の犯罪行動の芽を摘むことにある。 小川氏は「(性犯罪などで)執行猶予中の者、あるいは、仮釈放の者も含めて、GPS装着を検討する段階になっているのではないか」との見解を示した。 性犯罪者の再犯防止を目的とし、その対象者にGPS搭載端末を装着できる制度は米国や英仏、韓国などで導入されている。一方で、人権的な視点から問題視する見方もあり、日本では検討段階にある。 それに対し、小川氏は「今回の神戸での事件をきっかけとして性犯罪者や児童に対する声掛け事案、ストーカーらに対するGPS装着について、改めて検討する時期に間違いなくきていると思われます。有効な防犯手段がない今、GPSを装着し監視することが必要だと思われます。もちろん、〝前科者〟といえども装着方法形態など配慮することは必要ですが、執行猶予や仮釈放の条件としてGPS装着が喫緊の課題になる」と指摘した。 (デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)