【サンパウロ時事】トランプ米政権が力を入れる麻薬密輸対策の一環として、南米ベネズエラの近海に軍艦を派遣したことをきっかけに、両国間で緊張が高まっている。 ベネズエラのマドゥロ大統領は「攻撃的な姿勢がより危険な水準にエスカレートした」と反発。米国による軍事力行使を想定し、多数の民兵による国土防衛の準備に取りかかった。 報道によると、米軍は8月中下旬、カリブ海南部に強襲揚陸艦を含む水上艦7隻や原子力潜水艦、4500人規模の兵士を派遣。一部の軍艦にはトマホークミサイルが搭載されている。トランプ政権は、ベネズエラの犯罪組織「太陽のカルテル」をマドゥロ氏らが主導していると主張。他の麻薬カルテルに支援を行い、米国の安全を脅かしているとの見方を示している。 ただ、「（派遣された）米軍の規模が麻薬対策とは合致しない」（英紙フィナンシャル・タイムズ）ことから、トランプ政権の真意を巡る臆測が広がっている。米軍は1989～90年に南米産麻薬の対米密輸中継地だった中米パナマに侵攻し、実権を握っていた当時のノリエガ将軍を排除した。 米国の動きに対抗してマドゥロ氏は、民兵450万人を動員して「ベネズエラの平和と安定、主権を守る」と表明。領海を警戒するために軍艦の展開も始めた。一方、グテレス国連事務総長に書簡を送り、「米国に敵対的な行動の停止を促す」ことを求めた。 トランプ政権は7月、ベネズエラが拘束していた米国人10人と米国がギャング構成員と見なしたベネズエラ人移民252人を交換する取引を成立させた。昨年7月の大統領選で不正があったとしてマドゥロ氏を正統な大統領として認めていない中でも、同氏と対話する姿勢を示していたが、最近では圧力を強めている。今年8月には、麻薬密輸に直接関わっているとしてマドゥロ氏の逮捕に向けた懸賞金をそれまでの2倍の5000万ドル（約73億円）に増やした。