アメリカのドナルド・トランプ大統領は2日、カリブ海南部を航行していたヴェネズエラの麻薬密輸船を米軍が攻撃し、「ナルコテロリスト」（麻薬を密輸・売買するテロリストの意味）11人を殺害したと発表した。 ヴェネズエラのギャング組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーを標的にした作戦だったと、トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。 当該船は、違法薬物をアメリカに運ぶため国際水域を航行していたと、トランプ氏は説明している。 トランプ政権はここ数週間、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に対する軍事的・政治的圧力を強めており、麻薬密輸容疑での逮捕につながる情報に対して5000万ドル（約74億円）の報奨金を提示している。マドゥロ氏は、ヴェネズエラはアメリカの軍事介入の試みと戦うと誓っている。 トランプ氏は2日、ホワイトハウスの大統領執務室で記者団に対し、ヴェネズエラ近海で「麻薬を運ぶボート」を「撃ち抜いた」と述べた。 そして、「そのボートには大量の麻薬が積まれていた」とした。 また、統合参謀本部議長のダン・ケイン空軍大将から本件について報告を受けたと明らかにした。 トランプ氏はその後、「今日（2日）の早朝、私の命令により、米軍はアメリカ南方軍（SOUTHCOM）の管轄区域内で、『トレン・デ・アラグア』だと間違いなく特定されたものに対してキネティック攻撃（動力学的攻撃）を行った」と、「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。 さらに、「この攻撃で11人のテロリストが殺害された。米軍側に被害はなかった。この件が、アメリカに麻薬を持ち込もうと考えている者への警告となることを願う。警戒せよ！」と付け加えた。 投稿には、荒れた海を高速で進むモーターボートを捉えた、画質の荒い空撮映像も添えられていた。モーターボートは米軍の攻撃を受けて炎上した。 一方、ヴェネズエラのフレディ・ナニェス情報相は、トランプ氏が共有した映像について、人工知能（AI ）によって作成された可能性があると、根拠を示さずにソーシャルメディアで主張した。 マルコ・ルビオ米国務長官は、「本日（2日）、米軍はヴェネズエラから出航した麻薬密輸船に対して、カリブ海南部で致命的な攻撃を実施した。当該船はナルコテロリスト組織に指定されている組織が運用していた」とソーシャルメディアに投稿した。 現時点では、船が運んでいたとされる薬物の種類は明らかになっていない。 ■中南米諸国の犯罪組織を標的に 今年1月のホワイトハウス復帰以来、トランプ氏の政権はメキシコやラテンアメリカ諸国の複数の麻薬密輸組織や犯罪集団をテロ組織に指定している。 その中には「トレン・デ・アラグア」のほか、マドゥロ氏やヴェネズエラ政府高官（一部は軍や情報機関出身者）が率いていると米当局が見ているヴェネズエラの犯罪組織「太陽のカルテル」も含まれている。 米軍はこの2カ月間、カリブ海南部で、海軍艦船や数千人規模の海兵隊や海軍の兵士を追加派遣するなど、軍備増強を進めている。 トランプ政権は、アメリカへの麻薬流入を阻止するために武力行使も辞さない姿勢を繰り返し示してきた。 今回のような米軍の攻撃は「これからまだまだ起きる」と、トランプ氏は語った。 ヴェネズエラ政府は、同海域で米軍が展開していることに怒りをあらわにしている。 マドゥロ氏は1日、アメリカが攻撃すれば、ヴェネズエラは「武装共和国になると宣言する」と誓い、米軍派遣は「過去100年間で我が大陸が直面した中で最大の脅威」だと付け加えた。 （英語記事 Trump says 11 killed in US strike on drug-carrying vessel from Venezuela）