8月20日、神戸市のマンションで、見ず知らずの住人女性をストーキングし、殺害に至った驚愕の事件。殺人容疑で逮捕された谷本将志容疑者(35)は、同じくつきまとい行為の果てに、女性に暴行を加えた前科があった。なぜ惨劇は繰り返されたのか。男の「血塗られた人生」を辿った。( 全3回の1回目/続きを読む ) ◇◇◇ 「刑務所には入っていないのですが、拘置所には行きました。実は今、執行猶予中なんです……」 2022年12月。福岡県内のとある産業廃棄物処理業者の求人に応募した男は、社長におもむろに打ち明けた。そして、自身が犯した過ちについて、不気味にこう続けるのだった。 「半年前、女の子との気持ちの行き違いがありました。彼女に告白したが、自分の思っていることが伝わらず、首を絞めてしまった。その結果、(殺人未遂で)逮捕されました」 それから3年後、執行猶予も明けきらぬうちに、男は再び、信じられない凶行に走ることになる――。 ◇ 神戸・三宮の繁華街から南へ歩くこと15分。大都市の喧騒とは打って変わり、そこには人通りの少ない住宅エリアが広がっている。 その一角に立つ瀟洒(しょうしゃ)なマンションで事件が起きたのは、8月20日の午後7時20分頃のことだった。 「大手損害保険会社の神戸支店に勤務していた片山恵さん(24)が、自宅マンションで何者かに刃物で殺害されたのです。現場周辺には血の海が広がり、犯人は現場から逃走。兵庫県警は翌日、神戸市内の葺合(ふきあい)署に80人態勢の捜査本部を設置しました」(社会部記者) 容疑者逮捕の知らせが伝えられたのは、事件発生から2日後の22日の夕刻。場所は神戸市から約380キロ離れた東京・奥多摩町だった。 「殺人容疑で逮捕されたのは、東京・新宿区に住む会社員の谷本将志容疑者(35)。被害者との面識はなかったと見られています」(同前) 奥多摩の竹林沿いの山道を1人で歩いていた谷本。確保の瞬間を目撃した近隣住民が言う。 「大勢の警察官が金髪交じりの男を押さえ込んでいて、騒然としていました。男は何か叫んでいたけど、聞き取れなかった。その後、何台もの警察車両がやって来た。男が食べながら歩いていたのか、確保された周辺には、お菓子が散らばってました」 この日、谷本は最終の新幹線に乗って捜査本部が置かれた兵庫県警葺合署へ移送された。新神戸駅では終始、両手で顔を隠して歩き、押し寄せたマスコミと野次馬には一瞥もくれず、警察車両に乗り込んだ。