大阪府岸和田市発注の工事を巡る汚職事件で、別の2件の工事でも入札の最低制限価格を漏らしたほか、賄賂として計1900万円を受け取ったとして、大阪地検特捜部は24日、収賄と官製談合防止法違反などの疑いで、前市長の永野耕平容疑者(47)を再逮捕した。当時、市長在任中だった。特捜部は永野容疑者の認否を明らかにしていない。 汚職事件の舞台の一つとなった「岸和田競輪場施設整備工事」を受注した建設業者と永野容疑者との関係については、これまでにも疑惑の目を向けられることがあった。 この建設業者は岸和田市内に本店、大阪市中央区に本社を置く。令和3年5月に入札があった工事は市の競輪場整備計画の一環で、下回れば失格となる非公表の最低制限価格は3億4754万6千円(税抜き)に設定されていたが、この建設業者がわずか2千円上回るだけの3億4754万8千円(同)で落札した。 入札には計6社が応じ、最低制限価格を下回って失格になった業者もあった。特捜部によると、永野容疑者が入札に先立ち、社長(今年7月に辞任)に対して電話で最低制限価格を伝えたという。 永野容疑者はほかにも3年8月と昨年5月の計2件の工事の入札で社長に最低制限価格を漏らした疑いがある。一方で社長側は3回にわたり、便宜供与の見返りに現金計1900万円を永野容疑者に貸したとされる。 この建設業者が関わり2年度に進められた市庁舎の建て替え工事を巡っては、市議会で事業者の選定経緯が疑問視され、本契約を結ぶための議案が否決される事態も起きた。 現庁舎は昭和29年に建設され老朽化していることから、市は令和元年度に基本計画を策定。約130億円かけて現在の場所に新庁舎を建設することを計画した。 公募型プロポーザル方式の事業者選定では、1次審査を3つの共同企業体(JV)が通過。しかし、2年11月、2JVの関係者が選定委員の一人である当時の副市長を訪れ、市役所に名刺を置いて帰った行為が規定に反するとして2JVを失格とし、残ったJVと仮契約。地元企業としてこのJVに参加していたのが、問題の建設業者だった。 失格の判断は外部選定委員に諮らず、市が独断で行っており、委員が反発し、5人のうち4人が辞任。市議会も3年3月、「選定の公平性、透明性が担保されていない」として、本契約を結ぶための議案を反対多数で否決した。