平成以降最多の236人を摘発し捜査終結 参院選での公選法違反疑い、パチンコ店長ら送検

7月の参院選に自民党から比例代表で出馬した阿部恭久氏(66)に投票する見返りに従業員らに報酬を約束したとして、パチンコ店運営会社「デルパラ」(東京都港区)幹部ら6人が逮捕された事件で、警視庁など1都7県の合同捜査本部が、公職選挙法違反の疑いで、同社グループ29店舗の店長や従業員ら計230人を書類送検し、捜査を終結していたことが26日、捜査関係者への取材で分かった。 ■「本社の指示に従わざるを得なかった」 捜査関係者によると、書類送検されたのは、デルパラと系列店「モリナガ」の店長や従業員ら10~60代の男女230人。店長や本部職員は、デルパラ社長の李昌範被告(50)=同法違反罪で起訴=らと共謀し、従業員らに買収約束をしたとしている。買収された従業員らも摘発対象となった。複数の店長は調べに「違法だと思ったが本社の指示に従わざるを得なかった」などと供述していたという。 ■背景にパチンコ業界の不振 一連の事件を巡って、警視庁などの合同捜査本部は李被告や同社幹部ら6人を同法違反容疑で逮捕。立件された人数は計236人となった。 「平成以降最大規模」の買収事件となったが、背景には苦しい業界事情があったとみられる。 一連の捜査では「統括役」だった李被告らが、幹部に投票状況を把握させるなど役割分担をしていたことが明らかになった。 また、令和4年の参院選でも同様の手口で従業員らに、業界が支持する特定の候補への買収を働きかけていたとされることも判明。総売上高の減少が続くなどパチンコ業界が苦境に立たされていたことが背景にあったとみられる。 ■記入済の投票用紙を写真撮影 今回の事件では公職選挙法の「グレーゾーン」を突く行為も確認され、公選法の「課題」も明らかになった。 李被告らは投票先を確認するため、従業員らに記入済みの投票用紙の写真を撮影させていた。 公選法では「投票所の秩序をみだす者」について、投票管理者が退出させるなどできるとしているが、投票用紙の撮影行為は必ずしも止められるわけではないという。 拓殖大学の岡田陽介教授(政治学)は「写真撮影は(投票先の)確実な証拠になるので今後も悪用されかねない。投票所の撮影行為も規制される方向に議論されてもいい」と話した。(海野慎介)

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