東欧モルドヴァで28日に総選挙が行われ、マイア・サンドゥ大統領の親欧州政党が過半数議席を獲得する見込みとなった。この選挙は、同国の欧州連合(EU)加盟に向けて極めて重要とされている。 サンドゥ大統領は投票後、選挙に「大規模なロシアの干渉」があったと警告。この選挙にウクライナとルーマニアに挟まれたモルドヴァの将来が懸かっていると述べた。 有効票160万票のうち96%が開票された時点で、サンドゥ氏の「行動と連帯(PAS)」は得票率50%に迫っており、親ロシア派の愛国者選挙ブロックを大きく上回っている。同ブロックの得票率は25%未満にとどまっている。投票率は52%を超え、近年の他の選挙よりも高かった。 主要野党・社会党のイーゴリ・ドドン党首は、開票が始まる前から勝利を主張し、29日に議会前で抗議するよう呼びかけていた。 モルドヴァでは近年、選挙が接戦となることが多かったが、今回は最終的には、PASが定数101の議会で再び過半数を獲得する見込みだ。 PASは4年前の前回選挙では得票率52.8%だった。今回は54議席を確保する見通しとなっている。 そのため、政権を樹立するにあたり、オルタナティヴァ連合やポピュリズム政党「我らの党」など、他の政党の支援に依存する必要はない。 モルドヴァは2022年、ロシアのウクライナ侵攻開始から4カ月後に、ウクライナと共にEU加盟候補国となった。 ■在外投票所で爆弾騒ぎも この選挙をめぐる緊張の度合いを示すものとして、イタリア、ルーマニア、スペイン、アメリカの在外投票所で爆弾騒ぎが報告された。 同様の騒ぎはモルドヴァ国内でも報告されており、投票翌日に騒乱を計画した疑いで3人が逮捕されている。PASのイーゴリ・グロス党首は、28日の一連の事件について、ロシア政府の支援を受けた犯罪組織の関与を非難し、「選挙プロセスを継続させるために、忍耐と冷静さを保ってほしい」と訴えた。 モルドヴァにはまた、ウクライナとの国境沿いに、ロシア軍が駐留する親ロシア派の分離地域トランスニストリアが存在する。 この細長い地域に住む住民はモルドヴァのパスポートを所持しており、多くは強い親ロシア派だ。社会党のドドン党首は、「あらゆる種類の嫌がらせがあり、彼らが投票するのを妨げられた」と述べた。 モルドヴァ国民は、隣国ウクライナで続くロシアによる全面侵攻の影響を受けてきたが、同時に、急騰する物価や高水準の汚職にも直面している。 昨年11月に2期目の当選を果たしたサンドゥ大統領は国民に対し、自国の民主主義の将来は自分たちの手に委ねられていると警告。「票を軽んじれば、すべてを失うことになる」と訴えた。 一方、サンドゥ氏の主要な政敵の一人であるドドン氏は、投票が締め切られると直ちに国営テレビに出演。出口調査もなく、早期開票結果も発表されていない段階で、親ロシア派の愛国者選挙ブロックが選挙に勝利したと主張した。 ドドン氏は、「記録的な数の投票」に感謝たうえで、政権与党PASに退陣を求め、すべての野党支持者に対して、29日の正午に議会前で「自らの票を守る」ために集まるよう呼びかけた。 「我々は不安定化を許さない」とドドン氏は約束し、「市民は投票した。その票は、たとえ気に入らなくても尊重されなければならない」と、サンドゥ氏とその政党に向けて発言した。 ドドン氏の選挙ブロックに属する1党は、違法な資金提供の疑いのため、投票の2日前に立候補を禁じられていた。 モルドヴァの警察は選挙前、ロシアによる前例のない情報操作と買収工作の証拠があったと報告した。また、セルビアに渡航して銃器訓練を受け、騒乱を共謀した疑いで、数十人が逮捕された。BBCの調査報道では、親ロシア的なプロパガンダや偽情報を投稿すれば報酬を支払うとするネットワークの存在が明らかになっている。 ロシア寄りの政党は、警察主張を偽りで演出だと否定。政府が人々を脅して支持を得るために仕組んだものだと非難した。イギリスにあるロシア大使館はBBCの報道を否定し、モルドヴァとその「西側の支援者たち」が、モルドヴァ政府の「内部問題」から世間の目をそらそうとしていると主張した。 BBCが訪れたすべての投票所内には、透明な投票箱を見下ろす位置に三脚に設置された小型カメラが置かれていた。 選挙監視員らは、違反の報告があった場合に確認できるよう、すべてを記録していると説明した。 (英語記事 Pro-EU party in Moldova wins election mired in claims of Russian interference)