勤務先の保育所の園児にけがを負わせたとして起訴され、その後に無罪が確定した保育士の男性(36)が2日、男性に有利な証拠を検察や警察に隠されたとして、国や東京都に慰謝料など約8600万円を求めて東京地裁立川支部に提訴した。「証拠隠しによって被告の立場に置かれ続け、冤罪(えんざい)の危険にさらされた」と訴えている。 男性は2023年2月、東京都日野市の保育所で園児に暴行したなどとして逮捕された。公判では「男性の暴行を見た」とする元同僚2人の証言が信用できるかが争われた。 弁護側は証言の信用性を判断するため、元同僚2人がやりとりしたLINEのデータを開示するよう求めたが、検察側は「ない」と回答。だが、警察官が証人尋問で「データはある」と明かし、検察側にも伝えたと説明した。判決は、開示されたデータをもとに元同僚2人が証言内容をすりあわせた疑いを指摘し、男性を無罪とした。 男性側は訴状で、検察側がデータの存在を知った後も、警察官の証言後も開示を拒んだのは「証拠隠し」だと批判。警察が「事件に関連しない」としてデータを検察に当初送致しなかった対応も、「あえて隠そうとした意図が強く推認される」と主張する。 こうした対応により、保釈されるまで294日間も拘置所などで拘束され精神的苦痛を受けたと訴えている。(森下裕介)