英中部マンチェスターで2日朝(日本時間2日夕)、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)の前にいた人たちが車と刃物で襲撃され男性2人が死亡、3人が重傷を負う事件が発生し、警察は同日、テロと断定した。現場で警官が射殺した容疑者はシリア系英国人の男性(35)とみられ、ほかにテロ行為の依頼・準備・教唆の疑いで男女3人を逮捕した。動機を調べている。 一方、地元警察は3日、死亡した男性2人のうちの1人と負傷者1人は警官の銃撃を受けた可能性があると発表した。「残忍な攻撃を終わらせるために必要な行動の結果として予期せぬ形で(誤射が)生じた可能性がある」としている。 地元警察によると、容疑者は車で人々に突っ込んだ後、刃物で襲撃した。さらにシナゴーグ内への侵入も試みたが、警備員や信者、駆けつけた警官が阻止した。この日はユダヤ教で最も神聖とされる祝日「ヨムキプール」(贖罪(しょくざい)の日)だった。 スターマー英首相は訪問先のデンマークから急きょ帰国し、閣僚らとの緊急会議を開いた。その後の演説で「反ユダヤ主義の憎悪が再び高まっている。英国はそれを打ち破らないといけない」と訴え、ユダヤ系コミュニティーを守るために警官の配備の強化を約束した。スターマー氏の妻ビクトリアさんもユダヤ系だ。スターマー氏夫妻は3日、事件現場を訪れた。 イスラエルのネタニヤフ首相は2日、X(ツイッター)で遺族らに哀悼の意を表明した上で、「私が国連で警告したように、テロに対して弱さを見せれば、さらなるテロを招くだけだ。強さと団結だけがテロを打ち破れる」と述べた。 英メディアによると、マンチェスターでは2月にも、ユダヤ系男性がシナゴーグを出た直後に背後から瓶で殴られ、顔を負傷する事件が発生。ロンドンでも今年、シナゴーグに対する侵入や器物損壊などの事件が散発的に起きている。【ロンドン福永方人】