シンガポール、香港の民主活動家の入国拒否 「国益に適さない」と

ケリー・アン記者、テッサ・ウォン・アジアデジタル記者(BBCニュース) 香港の民主化活動家で、現在は中国国外に逃れている羅冠聰(ネイサン・ロー)氏が、ビザ(査証)を発給されていたにもかかわらず、シンガポールへの入国を拒否された。シンガポール当局は、羅氏の滞在が「国益に適さない」と述べている。 現在イギリスで亡命生活を送る羅氏は27日、「非公開・招待制」の会議に出席するためシンガポールに到着したが、入国審査で4時間にわたり拘束されたと話した。 羅氏はBBCに対し、「質問は一切されず、入国拒否の理由も示されなかった」と述べた。 シンガポール内務省は、羅氏が香港当局から国家安全保障を脅かしたとして指名手配されていると説明している。シンガポールは香港との間で、身柄引渡し条約を締結している。 シンガポール内務省の報道官はBBCの取材に対し、「羅氏の入国および滞在は、シンガポールの国益に適さない」と述べた。 また、「ビザを取得していても、入国時には追加の審査が行われる場合がある。羅冠聰氏の場合もそれに該当する」と説明し、羅氏が到着後に「事情聴取および入国管理と安全保障に関する審査」の対象となったと付け加えた。 シンガポールは、外国の政治について慎重な姿勢を取ることで知られている。政府は昨年発表した声明の中で、「他国の政治をシンガポールに持ち込むことに対して、明確かつ強い立場を取っている」と述べている。 羅氏は声明の中で、入国拒否の理由は「政治的」なものだと考えると述べた。一方、「外部の勢力、例えばPRC(中華人民共和国)が直接的または間接的に関与しているかどうかは分からない」と話した。 羅氏によると、数日間の「一度限りの入国」を可能にするビザを申請し、出発の3週間前に承認されたという。また、イギリスの難民渡航文書を所持していると述べた。 羅氏は28日、出発地だった米サンフランシスコ行きの最も早い便で送還された。 羅氏が出席予定だったイベントの主催者は、コメントを求めたBBCの取材に応じなかった。 羅氏は、香港の民主化運動で最も著名な人物の一人。2014年の民主化デモ「雨傘運動」を主導し、収監された経験を持つ。2016年には、やはり著名な民主化活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏と、民主化を求める政党・香港衆志(デモシスト)を立ち上げ、党首を務めていた。 2020年に中国が香港で国家安全維持法(国安法)を施行した後、香港から脱出した。国安法は国家の分離、転覆行為、テロ行為などを対象とし、最高で無期懲役が科せられる可能性がある。 羅氏は2021年、イギリスで亡命を認められた。 香港当局は、羅氏および他の民主化活動家の逮捕につながる情報に対して、100万香港ドル(約1900万円)の懸賞金を提示している。 シンガポール当局が香港の民主化活動家に関して措置を講じたのは、今回が初めてではない。2019年には、数年前にオンラインフォーラムに黄氏がリモートでで参加したとして、このフォーラムを開催したシンガポール人活動家に罰金を科している。 (英語記事 Singapore denies entry to exiled HK pro-democracy activist)

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