2018年に起きた奥田交番襲撃事件で殺害された警備員の妻が「県警の初動対応」に問題があったと訴えた裁判に判決です。富山地裁は29日原告の請求を棄却、原告側は近く控訴する方針です。 中村信一さんの妻 「きのうまでは、わたしの訴えを取り上げてもらえるのではないかというかすかな希望も持っていましたけども、きょうの判決受けまして、安心安全は、警察に委ねられないなという風に感じました」 提訴から4年。富山地裁の判決にこう話したのは、事件で命を落とした警備員・中村信一さんの妻です。 事件は2018年6月、元自衛官の島津慧大被告(28)が富山市の奥田交番に押し入り、所長だった稲泉健一さんを殺害、奪った拳銃で奥田小学校で警備の仕事をしていた中村さんを殺害しました。 刑事裁判の証拠を見る中で、「夫は死ななくても済んだのでは」と感じるようになった中村さんの妻は事件から3年後、警察の初動対応を明らかにするために県などを相手取り提訴。 中村さん 「夫が一番望んでいることは自分のような死ななくてもよかった被害者が、今後2度と出てほしくないということを願っているっていうことを警察に分かってほしい。やっぱり主人は死ななくてもよかったんだっていうのを警察に認めてほしいという思いがありまして」 ■注意喚起をしていれば被害拡大を防げたか 争点は、奥田交番から県警への最初の通報から中村さんが殺害されるまでの17分間に、警察が周辺に注意を呼びかけることができたかどうかです。 原告側は島津被告が拳銃を持って逃げている可能性が高いと認識していたにもかかわらず、近隣住民への注意喚起を怠ったと主張。 110番通報を受理した県警の通信指令課が適切に対応し、現場周辺で住民に避難・警戒を呼び掛けていれば、中村さんが殺害されることはなかったと主張しました。 一方、県警側は、中村さんや近隣住民に危険が切迫していたことは認識できなかったと反論。「警告するには犯人の人相や逃走ルートを具体的に把握する必要があり通報から逮捕までの間では困難だった」と請求棄却を求めました。