青森県八戸市で2024年1月、女児(当時5)が母親と内縁の夫から虐待され死亡した事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた無職、関川亮被告(33)の裁判員裁判の初公判が6日、青森地裁(蔵本匡成裁判長)であった。関川被告は起訴内容について争う姿勢を示し、弁護側は無罪を主張した。 起訴状などによると、関川被告は同居していた交際相手の女と共謀し、24年1月7日、女の長女・宮本望愛(のの)ちゃんを暖房設備のない浴室に連れていき、水の入った浴槽内にとどまるように命令。約4時間半にわたって放置し、低体温症による急性循環不全で死亡させたとされる。 関川被告は罪状認否で「水をかけたというところと、水の入った浴槽に入れたこと、(午後)9時半まで放置したのは違う」と述べ、無罪を主張した。一方で女児を浴室まで連れていったことは認めた。 検察側は冒頭陳述で、女児がおもらしをしたり隠れて食べ物を食べたりすると、関川被告が女児に対し服を着たまま水をかけ放置する虐待を繰り返すようになり、女児の母親は黙認していたと主張。事件4日前に母親から女児が隠れて豆大福を食べていたと聞き、「殺すわ」「今日はしにめにあうよ」などと、母親にメッセージを送信していたことも明かした。また、関川被告の弁解について、その信憑(しんぴょう)性に疑問を呈した。 弁護側は冒頭陳述で、浴室に置き去りにするだけで危険性が発生したとは言えないとして、関川被告の行為は遺棄に当たらないとした。また、関川被告が女児に水をかけたとすることや水の入った浴槽に立たせたとする検察側の主張について、女児の母親の供述の信用性などを疑問視。関川被告が取り調べ段階で女児に水をかけたことを認める供述をしていたが、「裁判でする供述より信用できるのか」と述べた。さらに、関川被告の行為には遺棄の故意がなく、行為と女児の死亡とに因果関係がないと主張した。 女児の母親は24年12月に同罪で懲役9年の判決を受け、その後確定した。母親の裁判では弁護側は、虐待を主導したのは関川被告で、母親も関川被告から日常的に暴力を受けていたと訴えていた。(小田邦彦) ■青森県八戸市で起きた女児虐待死事件の経緯 2022年11月ごろ 関川亮被告が、亡くなった宮本望愛(のの)ちゃんの母親と交際開始 23年6月 関川被告と母親、望愛ちゃん、弟が千葉県松戸市から青森県八戸市に移る 7月28日 八戸児童相談所に「(関川被告が)望愛ちゃんを蹴ったり、たたいたりしている」と1回目の虐待通告 9月22日 県警から「子どもが夜泣きしているのに母親があやさない」と児相に2回目の虐待通告 10月ごろ 関川被告らが事件の起きた八戸市内のマンションに転居 10月31日 児相が関川被告、母親、望愛ちゃんと初めて面談 24年1月7日 望愛ちゃん(当時5)が青森県八戸市の自宅浴槽で倒れているのを母親が発見。その後、死亡を確認 2月15日 青森県警が傷害致死容疑で、望愛ちゃんの母親と内縁の夫の関川被告を逮捕 3月7日 青森地検が保護責任者遺棄致死の罪で2人を起訴 11月26日 望愛ちゃんの母親が青森地裁での裁判員裁判の初公判。起訴内容を認める 11月28日 検察側が母親に懲役12年を求刑 12月10日 青森地裁が母親に懲役9年の判決 25年10月6日 青森地裁で関川被告の裁判員裁判の初公判が始まる