「笑気麻酔と称し、若者の間で広がる指定薬物、「エトミデート」。今年5月に規制の対象となったが、沖縄では逮捕者が相次いでいる。那覇市の繁華街で取材すると、乱用の異様な実態が証言で浮かび上がってきた―― ■沖縄県内で広がる乱用 手足が震え、立ち上がることもできず、体が硬直して地面でもがく人々。これは中国で撮影された指定薬物エトミデートを使用した直後の姿を捉えた衝撃的な映像だ。 短時間で強い多幸感と幻覚作用が得られる一方、数分から数十分で激しいめまいや体の硬直をもたらすエトミデート。その異様な使用者の様子から「ゾンビタバコ」とも呼ばれるこの薬物が、県内で広がりを見せている。 「え、でもこの辺とかでも普通に震えてる人いますけど」「え、何、何って感じですよ」「大阪そんなんないんで」「何これ! みたいな」 那覇市松山で先週、取材に応じた若者は驚きの声を上げる。 「酔っ払いは一応いろいろ歩きながら一応普通に歩くんですけど、吸った人はもう歩けてない状態。立った状態のままで、どっかに持たれたままみたいな感じ」 乱用が広がる現状に危機感を抱く声も聞かれる。那覇市国際通りで話を聞くと… 「絶対沖縄で広まらないでほしい」「危ないものは普通に触らない方が得だと思うんです。単純に」 ■ 医療用麻酔から違法薬物へ エトミデートは元々国内未承認の医療用麻酔で、電子タバコにつけるリキッドとして流通した。乱用が表面化したのは今年2月のことだ。警察によると、エトミデートの影響で事件や事故の現場で奇声を上げ、けいれんする若者がいたという。しかし当初は取り締まる法律がなかった。 こうした状況を受け、警察は関係機関に働きかけ、厚生労働省は今年5月、エトミデートを指定薬物に指定。これにより、10代から30代の男女10人が逮捕・書類送検されている。 薬物依存からの回復を支援する団体「琉球GAIA」代表理事の鈴木文一さんは、エトミデートの危険性をこう説明する。 「エトミデートは、“またやりたい” みたいな、その渇望がすごく強い薬。どの薬よりも僕はエトミデートが好きです、みたいな人も何人かいる。それだけやめづらいタイプの薬ではあるのかなと思っています」