■静かな集落を襲った衝撃 2013年7月21日、山口県周南市の山あいにある金峰(みたけ)地区で、住宅2棟が全焼し、焼け跡から3人の遺体が発見されました。翌日には近くの2軒の住宅からそれぞれ1人の遺体が見つかり、計5人が殺害される衝撃的な事件でした。 静かな集落の様子は一変しました。同じ集落に住む保見光成死刑囚が殺人と放火の疑いで逮捕され、最高裁で死刑判決を受けました。最高裁はことし1月、再審を求める弁護団からの特別抗告を退け、再審を認めない決定をしました。 悲惨な事件から12年。この事件で殺害された女性(当時73)の娘と孫が、講演で今の思いを語りました。被害者の遺族にとって、この12年はどのような時間だったのでしょうか。 ■「おばあちゃんは熱中症で倒れただけ」 事件当時、小学4年生だった佳代さん(仮名)は、大好きな祖母を失いました。人のために動くことを惜しまず、お世話をするのが大好きで、周囲から愛された人でした。 しかし佳代さんは、祖母が殺されたことを直接誰からも聞かされませんでした。事件の当日に父と現場近くまで行き、警察による事情聴取が行われている最中も、祖母が亡くなった、殺されたということは全く聞かされていませんでした。 佳代さん 「本当にニュースを見るまでは、祖母が熱中症か何かで家の中で倒れただけだと思っていました」 佳代さんが真実を知ったのは、事件当日の夜、全国放送のニュース番組を家で見た時でした。 ■父が背負った第一発見者の重荷 祖母の第一発見者は、佳代さんの父でした。いつも定時に来るはずのおばあちゃんが来ない。連絡も取れない。心配した父は、佳代さんを車に乗せ、一緒に金峰へ向かいました。到着すると、父は佳代さんを車に残し、一人で家の中を探しました。 それは、佳代さんの母、貴子さん(仮名)から、「佳代と一緒に家の中を探さないでほしい。家の中で倒れているかもしれないから、佳代を車に置いて家の中を探してほしい」と、頼まれていたからです。