【実態は】“口座ブローカー”暗躍 口座開設で詐欺に悪用…知らぬ間に犯罪者に 専門家「絶対に口座の名義は売らないで」

10月16日、日本最大級の“口座ブローカー”集団「雨グループ」リーダーの西川悠輔容疑者(32)ら、20代から30代の男女7人が逮捕されました。 “口座ブローカー”は、闇バイトを募集して銀行口座を開設させ、カードや口座情報を購入。それを特殊詐欺グループなどに転売する仲介役です。 西川容疑者らは、闇バイトに応募した福島県の女に報酬を支払う約束をして、契約させたスマートフォンを銀行口座と紐付けさせたうえで、譲り受けた疑いが持たれています。 複数の詐欺グループなどに年間約1000口座を売却。少なくとも1億円以上の詐欺被害につながっていたとみられています。 西川容疑者らは約150人のリクルーターを使って口座を開設する闇バイトを募集。闇バイトに応じた人物に、銀行のキャッシュカードや口座情報が紐付くスマートフォンを用意させて3万円から30万円で買い取り、詐欺グループに20万円から75万円で売却していました。 「雨グループ」とみられる口座ブローカーとのやりとりの画面を見ると、購入する銀行名や限度額、価格など、明確に提示されています。 犯罪・詐欺ジャーナリストの多田文明氏によると、犯罪行為と知らず口座を譲渡する人が後を絶たないといいます。 特殊詐欺グループに売買されている銀行口座。 仲介する“口座ブローカー”はどう暗躍しているのか。その実態に迫ります。 ◆「自分が犯罪者に…」口座を悪用された人を取材 『サン!シャイン』は安易な気持ちで口座を売ってしまったことで、高額な金額を請求された人を取材しました。 銀行口座を詐欺グループに悪用された50代の男性。きっかけは今年1月にSNSで見つけた副業紹介だったといいます。 口座を悪用された男性(50代): 「会社を作って外国人に売るといくらか報酬がもらえるっていう副業があるんですが、興味はありますか」と言われて。 会社を設立し売れば、報酬がもらえると誘われ、LINEでやりとりすることに。 口座を悪用された男性(50代): 会社を作っていくうちに今度は「法人口座が必要なので法人口座を作ってもらえませんか?」というふうに言われて。 詐欺グループは、法人を作り銀行口座を3つ開設するように誘導。口座の作り方やキャッシュカードの郵送方法など細かく伝えてきたといいます。 口座を悪用された男性(50代): LINEの文面とか見ても「かしこまりました」とか、書いてるんで、わりと社会人なのかなと思っちゃいました。 丁寧な対応に、怪しいと疑わなかったという男性。しかし、待っていたのは想定外の事態でした。 口座を悪用された男性(50代): 「630万円を返してください」と。そういう内容の書面が届いて。 合計すると、2000万くらいは被害があるのかなって。 詐欺グループに悪用され、この口座にお金を振り込んだ被害者から返済を求められたのです。 男性の口座が詐欺の振込先として利用された合計は2000万円ほど。口座を渡した詐欺グループに連絡するも「対応する」と言われただけでした。 警察から事情を聞かれているという男性。 口座を悪用された男性(50代): 警察から「口座を作って渡した時点であなたが犯罪者なんで」って言われて。 結局自分が悪いんだなって思って。自分のやったこと、過ちがちょっともったいないなと思って。結局自分が犯罪者になっちゃったので…。もう…取り返しつかないですよね。 ◆“口座ブローカー”に関わる犯罪 どんな罪に? ・口座情報(口座番号・暗証番号)の売買 →犯罪収益移転防止法違反 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金または併科 ・譲渡目的での口座開設を指示 →詐欺罪 10年以下の拘禁刑 ブローカー側だけでなく、口座を売買した口座名義人、口座を開設した名義人も罪に問われる可能性があります。 犯罪・詐欺ジャーナリスト 多田文明氏: こうした犯罪に手を染めてしまう人たちのほとんどは、名義を売ることが犯罪になるということはあんまり知らないという方がいらっしゃるんです。 キャッシュカードの裏を見ていただいたら分かるんですが、そこには他人への譲渡はしちゃいかんと書いてあるはずなので、この辺の知識は最低限持っていただくということは大事ですね。 口座の売買によって、口座が凍結され新規口座を開設できない、口座を犯罪に利用され詐欺被害に遭った人から賠償請求されるなど、刑罰以外の事態に発展する可能性もあります。 橋下綜合法律事務所の溝上宏司弁護士によると、「詐欺に使われると知らずに銀行口座を他人に売却した場合でも、支払い責任が生じる可能性が高い」といいます。 犯罪・詐欺ジャーナリスト 多田文明氏: 結局、被害に遭った方は口座の名義人とかそこしかまずたどるところがないので、その名義人に弁護士を通じて損害賠償請求するというケースがありますので。 そうなるともうそれが来た時点で、お金払わないといけないのかどうかということでまた警察にも行かないといけないとか、いろんな苦労をしますので、絶対に口座の名義は売ってはいけないです。 売買だけではなく、口座を貸しただけでも犯罪に悪用され損害賠償を請求されたというケースもあります。 犯罪・詐欺ジャーナリスト 多田文明氏: やはり口座を売ることが簡単なので、どうしても売ってしまってお金を得ようとしてしまうんですけれども、それ自体がダメと。 特に今回摘発されたグループは「リクルーター」といわれるのが150人近くいたというふうに言われているんですね。そのリクルーターたちがそれぞれまた口座名義人をSNSで募集してやるというような構図になっていますので、私たちの身近に危険が潜んでいるということをしっかり覚えておくことが大事ですね。 (「サン!シャイン」10月20日放送より)

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