史上最恐の盗難ツールで狙われるトヨタ車「エンジンだけでも価値」 触れずに解錠、始動も

「レクサス」「ランドクルーザー」など、トヨタ車の窃盗被害が相次いでいる問題で、今年1~9月の全国の自動車盗が、前年同期を上回るペースで発生していることが警察庁のまとめで分かった。車を破壊せずにロック解除などができる特殊機器が出回り、数分で犯行が可能に。盗難車の多くは外国人も関与するなどして解体後、海外に輸出されているとみられ、警察当局は分業化された犯罪組織の実態解明を進めている。 ■警視庁捜索の倉庫、20台以上の高級車運び込まれ 7月上旬、茨城県下妻市にある倉庫で見つかった、時価1000万円相当の「レクサス」。盗難届が出されていた車で、警視庁は盗品等保管の疑いで、現場にいたネパール国籍の男を含む3人を現行犯逮捕した。 東京近郊でトヨタ製の高級自動車が盗まれる被害が相次ぎ、警視庁などが捜査。5月以降、この倉庫に20台以上が運び込まれており、家宅捜索時には、エンジンが取り外された車や、数字だけが切り抜かれるなどした偽のナンバープレートも見つかった。盗難車は解体されるなどして、パーツごとに海外に輸出されていたとみられる。 ■インベーダー、ゲームボーイ…専用機器使い数分で犯行 警察庁によると、全国の自動車盗の認知件数は平成15年をピークに減少傾向だったが、令和4年から3年連続で増加。今年1~9月は5193件で、前年同期比733件増と歯止めがかからない状況になっている。 車種別でみると、今年上半期の盗難台数1位は「ランドクルーザー」が765件。次いで「プリウス」「アルファード」などと、9位までトヨタ車が続く。捜査幹部は「トヨタ車は海外の中古市場でも人気。エンジンだけでも、価値があるようだ」と明かす。 手口として目立つのは、車の制御システムに侵入する「CANインベーダー」とよばれる機器を使った犯行だ。機器は海外のウェブサイトなどで販売され、数十万円程度から購入できる。小型なため持ち運びも容易で、複数の車種や形式のに対応。車の配線が集まる部品に接続し、起動させるだけで、数分でドアロックの解除やエンジン始動が可能になる。 企業側も、手をこまねいているわけではない。トヨタ社は、インベーダーの不正信号を遮断するセキュリティーシステムを開発するなど対策を進めているが、近年は「ゲームボーイ」と呼ばれる新たな機器も登場。車が発する信号を盗み取ってスペアキーを作り出すもので、車に「触らずに」解錠やエンジンの始動を行うことができる。「史上最恐の盗難ツール」とも呼ばれ、対策が求められている。

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