出航判断の是非など争点 桂田社長、無罪主張へ 知床観光船事故公判・釧路地裁

北海道・知床半島沖で2022年4月、乗員乗客26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」(斜里町)の社長桂田精一被告(62)の初公判が12日、釧路地裁で開かれる。 海難事故で操船に関与していない経営者の刑事責任が問われるのは異例で、弁護側は起訴内容を否認する方針。悪天候が予想される中、事故の予見可能性や出航判断の是非が主な争点となる。 事故では船長=当時(54)=をはじめ、乗っていた26人全員が死亡、行方不明となり、詳しい事故原因の究明は難航した。第1管区海上保安本部(小樽市)は現場から引き揚げた船体を陸揚げして詳しく分析。小型模型を使った再現実験を行うなどし、事故発生から2年以上が経過した24年秋に桂田被告を逮捕した。 起訴状によると、桂田被告は運航基準で出航を中止すべき風速や波高が予想され、死傷事故を予見できたのに、運航管理者などとして出航や航行継続の中止を船長に指示すべき義務を怠ったとされる。 全12回の公判では、来年2月までの6回で証人尋問が行われ、検察側証人として、同社の元従業員や同業者ら19人が出廷する予定。 これに対し弁護側は、事故は予測できず、桂田被告に過失はなかったと主張する方針。亡くなった船長が、天候が悪化したら引き返す「条件付き運航」を判断したなどと訴えるとみられる。 元検事の落合洋司弁護士は「検察側は桂田被告の運航管理者などの立場を重視している」と指摘。運航中止基準を超える注意報が出ていたことなどから「過失の立証は十分可能だ」との見解を示した。ただ、「弁護側が、『条件付き運航』が同業他社でも慣習的に行われていたと主張する可能性もある」としている。 公判は来年3月の被告人質問を経て、4月16日に結審。判決は6月17日に言い渡される予定。

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