米国防総省、ケリー上院議員を不正疑惑で調査と 退役軍人の議員は法律順守を兵士に呼びかけ

アメリカの国防総省は24日、マーク・ケリー上院議員(民主党)を「重大な不正行為の疑い」で調査すると発表した。ケリー氏は元米海軍大佐で、違法な命令を拒否するよう兵士に呼びかけるビデオを公開した民主党議員6人のうちの1人。 6議員は18日にビデオを公開。その中でケリー氏は、米兵らに向け、「私たちの法律は明快だ。違法な命令は拒否できる」と述べた。 元宇宙飛行士でもあるケリー議員は退役軍人だが、統一軍事司法法典(UCMJ)が適用される。これは1951年に連邦議会で制定された連邦法で、軍関係者の言動などに特別な規則を課すもの。 戦争省(国防総省)はソーシャルメディア「X」のアカウントで、ケリー議員を調査すると発表したが、疑いの詳細は明らかにしていない。 ただ、「すべての軍人は、UCMJ(統一軍事司法法典)の下で合法的な命令に従う法的義務があることと、命令は合法的と推定されることを、改めて認識する必要がある。軍人の個人的な思想は、合法的な命令への不服従を正当化するものでも許すものでもない」とも書いており、今回の動きがケリー氏の声明への対応であることがうかがえる。 ケリー議員は、自分が調査されると知ったのは、ピート・ヘグセス国防長官のソーシャルメディア投稿を通じてだったと、「X」で明らかにした。 そのうえで議員は、「もしこれが、私や他の議員らを脅し、自分たちの仕事をすることや、現政権の責任追及をやめさせるのが狙いなら、それはうまくいかない」と書いた。 ケリー氏らビデオに出てくる民主党議員らに対しては、ドナルド・トランプ大統領も先週、「扇動行為で、死刑に値する」とソーシャルメディアで非難している。 ケリー氏はさらに「X」で、「私は22歳で合衆国海軍の少尉として任官し、憲法に忠誠を誓った」と前置きしてから自分の軍歴を並べ、さらに、妻ガブリエル・ギフォーズ氏が下院議員だった当時に頭を撃たれた経験についても触れた。 そのうえでケリー氏は、「私はこの国にあまりに多くをささげてきた。憲法を守ることより自分たちの権力を大事にするいじめっ子たちによって、私が沈黙させられるなどあり得ない」と書いた。 ■退役軍人にも適用 ケリー氏は海軍の戦闘機パイロットとして第1次湾岸戦争に従軍。2001〜2011年には航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル・ミッションに4回参加した。アリゾナ州の連邦下院議員だった妻ギフォーズ氏は、2011年の銃乱射事件で撃たれた後、政界を引退した。 UCMJが適用されるのは、すべての現役兵と、活動中の州兵や予備役兵、軍士官学校の学生、戦時中に軍の支援に従事する一部の民間人。 さらに、退役軍人にも適用され、関係する連邦法などへの違反があった場合、軍はその退役軍人を呼び出すことができる。連邦法には、「軍の忠誠心、士気、秩序と規律の妨害を意図した行為を禁止する」という内容のものもある。 国防総省はこの日の発表で、ケリー氏に対して、軍法会議や行政処分を含む対応がさらに取られる可能性があるとした。 また、この問題は「軍法にのっとって扱われ、適正手続きと公平性が確保される」と主張。それ以上の公式コメントは、「手続きの完全性を保つため」に制限されるとした。 ■「扇動的6人」 18日公開のビデオでは、民主党議員らが、「現在の政権は、制服を着た兵士や情報機関の専門家らを、アメリカ国民と対立させようとしている」と主張。 「私たちと同じく、皆さんも今の憲法を守り抜くことを誓った。今、私たちの憲法に対する脅威は、外国からだけでなく、国内からももたらされている」と訴えた。 ビデオは、登場するエリッサ・スロットキン上院議員(ミシガン州)がシェアして広まった。ほかに、クリス・デルージオ(ペンシルヴェニア州)、クリシー・フーラハン(同)、マギー・グッドランダー(ニューハンプシャー州)、ジェイソン・クロウ(コロラド州)の各下院議員も出ている。6議員は全員、軍や情報機関に勤務した経験がある。 これを受けてトランプ氏は20日朝、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に連投し、6議員を「最高レベルの反乱扇動行為」をしたと非難。「私たちの国に対する反逆者は一人残らず逮捕され、裁判にかけられるべきだ。彼らの発言をそのまま許すなどあってはならない――もはや国を失う!! ! 手本を示さなくてはならない」と書いた(編注:太字は原文ではすべて大文字)。 この発言は超党派の非難を呼び、軍の最高司令官でもあるトランプ氏は21日のFOXのインタビューで、民主党議員らを「死をちらつかせて脅したわけではない」と軌道修正を図った。 一方、ヘグセス国防長官は24日、国防総省の声明を自分の「X」アカウントで再投稿し、民主党議員のビデオを「卑劣、無謀、虚偽」だとした。また、6議員を「扇動的6人」と呼んだ。 また、指揮官の命令を無視するよう米兵に呼びかけることは、「『良い秩序と規律』をあらゆる面で損なう」とした。 ヘグセス氏はさらに、「あの人たちの愚かな叫びは疑念と混乱をまき散らす――それは私たちの戦士たちを危険にさらすだけだ」と書いた。 6議員は全員、UCMJの適用対象だが、ヘグセス氏はケリー氏だけをことさら取り上げて批判。同氏の行為は「軍の信用を失墜させるものであり、適切に対処される」とした。 (英語記事 Pentagon to review Senator Mark Kelly misconduct allegations after video to troops)

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