血痕で記された「フセイン、アリー」 シリア、遊牧民の襲撃現場で目光らせる警察

シリア中部ホムスで11月下旬、ベドウィン(遊牧民)の夫妻が惨殺され、現場からイスラム教シーア派の一派アラウィ派の犯行を示唆するメッセージが見つかったことから、ベドウィンの集団がアラウィ派地区を襲撃して報復する事態となった。シリアではアサド前政権崩壊から1年が過ぎても民族・宗派間の対立がくすぶるが、襲撃事件の現場では警官らが国民融和に腐心する様子を見てとれた。 ■くすぶり続ける民族・宗派対立 11月28日、ホムス・ゼイダル地区。事件現場の住宅を探し当てると、その前に1台の乗用車が止まっていた。ゼイダル警察署のウィサーム氏(34)ら警官3人が車内から周辺の動向を注視していた。 日本の記者だと名乗ると、3人は現場の住宅内を案内してくれた。 事件は11月23日に起きた。寝室で寝ていた夫妻のうち夫はトイレに引きずり出され、石で撲殺された。妻は別の部屋に逃げたところで閉じ込められ、放火されて焼死したという。 洗面台には、血痕で「フセイン、アリー」と書かれていた。「2人ともイスラム教初期の歴史に登場し、シーア派やアラウィ派が崇拝する。シリアに当てはめて言うと、2人の信奉者であるアラウィ派信徒の犯行だ、という意味だと解釈できる」。同行した通訳が解説した。 アラウィ派はアサド前大統領の出身母体。事件直後にメッセージの存在が明かされるとベドウィンの集団が付近のアラウィ派地区で商店を襲撃し、車などに放火して回った。120人が逮捕される騒ぎとなった。 シリア西部では3月、前政権を支持するアラウィ派の武装勢力と暫定政府軍との戦闘で1500人近くが死亡した。7月には南部スワイダで少数派のイスラム教ドルーズ派とスンニ派のベドウィンが衝突、千人前後が死亡した。 独裁の重しによって混乱を封じていた前政権が崩壊し、民族・宗派対立が噴出した形だが、歯止めがきかなかったこれらのケースに比べ、ホムスの衝突は小規模のうちに収束する傾向を見せた。 ■融和に腐心する警察当局

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