「家の外に出るな」事実上の戒厳令…装甲車が市街を行き交う恐怖のイラン

昨年末に始まったイランの大規模な反政府デモは、約2週間続いた末、治安部隊による大規模な流血鎮圧を経て、事実上、収束局面に入った。首都テヘランは武装した治安部隊や親政府系民兵が市街地を掌握している状態で、外信は現在の状況を「非公式な戒厳令(unofficial martial law)」に近い強硬なな統制体制と評価している。 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は18日(現地時間)、テヘラン東部のハフトホズ広場など主要なデモ拠点に、黒い制服を着た鎮圧警察や親政府のバスィージ民兵隊、装甲車が常時配置されていると伝えた。一部地域では、装甲車の上に狙撃手が配置されている様子も確認されたという。あるイラン人ブロガーのXアカウントに投稿された映像には、道路脇に全焼した市内バスやビルが映っている。さらに、テヘランの高架橋には「国王万歳。これは国のためのパフラヴィーの最後の戦いだ。国王万歳」と書かれた粗末な横断幕が掲げられている様子も捉えられていた。 市民の生活はいまだ正常化していない。インターネットは約1週間にわたって遮断されたままで、現金引き出しを防ぐためATMには金属製の遮断板が設置されている。大学も休校が続いている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は住民の証言を引用し、「街全体に監視されているという感覚が広がっている」と伝えた。テヘランや近隣都市の各所では、武装した兵士が拡声器で「家の外に出るな」と警告し、事実上、通行を統制している状況だという。FTは「流血鎮圧の後、テヘランの街は静まり返ったが、住民の怒りと喪失感はむしろ深まっている」と伝えた。 人的被害は拡大している。米国に本部を置く人権団体「人権活動家通信(HRANA)」は、この日の発表で、デモの過程で3919人が死亡し、2万4000人以上が逮捕されたと明らかにした。イラン政府も数千人が死亡した事実は認めているが、正確な数値は公表していない。ただし政府は、デモの背後に米国やイスラエルなどの外部勢力がいるとして、責任を転嫁する姿勢を見せている。最高指導者のアヤトラ・セイエド・アリ・ハメネイ師は「イスラエルや米国と連携した勢力が甚大な被害をもたらし、数千人を殺害した」と主張し、マスード・ペゼシュキアン大統領も「最高指導者への攻撃は全面戦争と同じだ」と述べた。 こうした中、差し迫っていると伝えられていたイランに対する米国の軍事介入は、ひとまず保留されたと、米政治専門メディアのアクシオスがこの日報じた。アクシオスによると、ドナルド・トランプ大統領は空爆を真剣に検討していたが、中東地域における米軍戦力の不足や、イスラエルとサウジアラビアの懸念、イラン側から伝えられた非公式の沈静化メッセージなどを総合的に考慮し、最終的に攻撃命令を出さなかったという。実際、イランの外相は米国側との非公開のやり取りの中で、デモ参加者の処刑を中止する意向を伝えたとされる。トランプ大統領はその後、「(攻撃に)極めて実行寸前まで至ったが、自分の判断で止めた」と述べたという。 一方、祖国が事実上の戒厳状態に置かれている中でも、政権と密接な関係にある一部の富裕層イラン人は、海外でまったく異なる日常を送っている。英紙テレグラフは、イラン国境に近いトルコ東部のリゾート都市バン(Van)に、最近、裕福なイラン人が押し寄せ、酒席やパーティーを楽しんでいると報じた。クラブで一晩を過ごす費用は、入場料や酒、つまみ、水たばこなどを含め、イランの平均月給(約1万2000円)に匹敵する水準だという。あるイラン人は同紙に対し、「最近トルコに来ている富裕層は、政権から恩恵を受けてきた人々だ」とした上で、「イランにとどまるのが不安で一時的に国外に出ただけで、イランで稼いだ金を使うためにここに来ている」と語った。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする