データ偽装で繰り返される「不正交通取締まり」から身を守るには?

「県警察の責任者として、深くお詫びを申し上げます」2月20日の記者会見でそう首(こうべ)を垂れたのは、警察官1万5000人を擁する神奈川県警のトップ、今村剛本部長だ。 神奈川県警では、2022年3月~24年9月、「小田原厚木道路」をはじめとするスピード違反の取締り時などに、車両を追尾した距離を実際より長く記載した虚偽の書類を作成していたことが発覚。不正に関わった第2交通機動隊小隊所属の7人の警察官を、虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで横浜地検に書類送検したと発表したのだ。 県警は、不正を主導した40代の巡査部長を免職とし、残る6人にも停職や本部長注意の処分を下した。さらに、巡査部長が過去に取り締まった2716件の交通違反についても「疑念が払拭できない」として処分を取り消し、交通反則金約3400万円の返還も決めている。 大手紙社会部記者が解説する。 「いわゆる『青切符』の交付を伴う追尾式によるスピード違反取締りでは、違反が疑われる車両の後方を赤色灯を点灯させたパトカーが等間隔を保ちつつ、高速道路上の場合は300m以上追尾することが警察の内規で定められています。しかし実際には、300m追尾する前に違反車両が速度を落としてしまうことがある。 今回、免職となった巡査部長らは、そうした場合でも内規に反して交通違反として検挙し、交通反則切符や実況見分調書に虚偽の追尾距離を記載していた。さらに、青切符を交付した場合に義務付けられている実況見分についても、巡査部長は『一度も行ったことがない』と供述しており、県警の体制の緩みも問題視されています」(大手紙社会部記者) 【背後に不正のインセンティブ】 こうした交通違反の不正取締りは、神奈川県警に限ったことではない。 2023年には、福岡県警の50代の警部補が、信号無視や横断歩行者妨害など計10件の交通違反について虚偽の書類を作成したことが発覚。虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで書類送検されている。県警は同警部補を停職6カ月としたうえで、同警部補が過去に検挙した違反約1600件についても取り消しを行った。 2020年には、北海道警の警部補が、パトカーによる速度違反取締り10件分のデータを改ざんしていたことが発覚。道警は証拠偽造などの疑いで警部補を逮捕し、上司や不正な取締りに同行した男性巡査長ら計4人についても懲戒処分を下している。 なぜ同様の不祥事が全国の警察で繰り返されるのか。交通ジャーナリストの今井亮一氏はこう話す。 「警察は『交通取締りのノルマは存在していない』という立場ですが、交通違反取締りには目標検挙数が設定されている。また、交通課の警察官であれば、検挙数の多寡は業務評価の基準の一つとなるため、不正取締りのインセンティブになり得る。 さらに、交通違反取締りは『警察官の現認』、つまり警察官がその場で目撃したという主観に基づいて行うことができ、客観的証拠は必須ではない。不正取締りを十分に抑止する仕組みがあるとは言い難いのです」(今井氏) 交通安全の実現のためには、違反者取締りの重要性は否定できない。しかし、取締り自体が目的化してしまっているとすれば、本末転倒だ。では、そうした不正取締りから身を守るにはどうすればいいのか?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする