取り調べを拒んだら車いすに乗せられ、物のように取調室に運ばれた――。大阪府警に逮捕された男性(42)が黙秘権を侵害する行為で精神的苦痛を負ったと訴え、府に国家賠償を求めて大阪地裁に提訴することがわかった。その一部始終が映像に残されていた。 男性は食事中、酒に酔った同僚から暴行を受けてナイフで腹を刺したとして、殺人未遂の疑いで昨年9月1日に逮捕された。当初の取り調べで殺意を否定した。 弁護人によると、その後の接見で男性から「黙秘したのに取り調べがずっと続く。同じ質問をされたり、子どものことを考えろと言われたりする」との訴えがあった。弁護人は取り調べをしないよう求めるファクスを府警と大阪地検に送付。それでも、男性が取り調べを拒むと警察官は留置場で手錠と腰縄をつけ、車いすに乗せて取調室に連れて行ったという。 弁護人は「黙秘権を侵害する違法な行為だ」として、男性を大阪拘置所に移送するよう地裁に申し入れ、13日に認められた。移送後は取り調べがなくなり、男性は20日に傷害罪で起訴された。 日本では黙秘しても取り調べが続き、「ガキだよね」「引きこもり」などと罵声を浴びせられる例も相次いで発覚している。「逮捕されたら取り調べを受忍する義務がある」との法解釈が背景にあり、原告側は「その是非を正面から問う初めての裁判になる」としている。(大滝哲彰、山本逸生)