2025年5月23日にKONAMIよりプレイステーション5、Xbox Series X|S、PC(Steam、Epic Games Store、GOG)向けにリリースされる『Deliver At All Costs』(デリバー アット オールコスト)。開発はスウェーデンのStudio Far Out Gamesが手掛けている。 本記事では、発売前に2時間ほど行った試遊をもとにプレイレビューをお届けする。 ハチャメチャなゲーム内容とは裏腹にシリアスな物語 物語の舞台は1959年のセントモニークという架空の都市。プレイヤーは配達人・ウィンストンとなり、セントモニーク内を駆け巡りながら配達業をこなしていく。 これから紹介するゲーム内容とは裏腹に、物語はとてもシリアス。ウィンストンが会社の人たちとの数々のドラマをくり広げながら、地元の人たちに配達業務を通して交流していく。遊んだのは序盤のみで、中盤以降にどのようなストーリー展開が待っているのかはわからなかったが、ウィンストンはしだいに“狂気の底なし沼にはまっていく”とのこと。 ハチャメチャ配達業務をこなせ! 主人公のウィンストンを操作しクルマに乗って街中を走るのがゲームのメイン。画面はクォータービューで、左か右から見下ろす2視点のカメラ変更がある。 最大の特徴は建物・障害物などなど、目に見えるオブジェクトはだいたい破壊しながら走れること。 道路を走るのが基本にはなるものの、無理やり建物を突っ切っても問題ナシ。タイトル名の『Deliver At All Costs』(どんな犠牲を払っても配達する)そのままに、ハチャメチャすぎるドライブゲームとなっている。 フィールドは一定の広さのエリアごとに区分けされており、該当する場所まで行くとエリアチェンジ。それなりにフィールド全体は広く、街中以外にも火山地帯なども存在。セントモニークのなかを自由に走り回りながら、配達業をこなしていこう。 なお、クルマから降りることもでき、ウィンストンはジャンプもできる。ときには建物の上を走らなくてはならない場面もあり、ちょっとしたアスレチック要素も存在する。 やさしいゲームの仕様 人を轢いてしまうこともあるかもしれないが、本作の人間はとてもタフで、どんなにぶっ飛ばそうが命を落とすことはない。逆に安心して(?)運転できるが、轢かれた人間は怒り出し、クルマを攻撃したりしてくるのでご注意を。タフガイ。 ぶつかりまくったり攻撃されたりするたびにクルマはどんどん壊れていき、最後は爆発してしまう。 ただし、全体的にプレイヤーにやさしい作りになっており、たとえ水没しようと爆発しようとすぐにリスポーンする。とくにペナルティーなどもなく、クルマも車両によっては復活するので、何をしようとゲームオーバーにはならないというストレスフリーな仕様だ。 といって暴れまくっていると警察が出動してきて、追いかけられてしまう。クルマを降りた状態で警察に攻撃されると逮捕されるわけだが、これもペナルティはリスポーンするだけ。あくまでプレイのアクセントとして用意されているもので、基本は街中をメチャクチャにしながら爽快に走れることを優先している印象だった。 オブジェクト破壊の自由度があるため、ちょくちょくクルマが動けないことになってしまうこともあるが、ポーズメニューからリスポーンを選べばリトライできるなど、全体的にそのあたりの遊びやすさは確保されていた。 全体マップのほかミニマップも用意され、さらに目的地を設定すると道路に矢印が表示される。これを使えば迷うことは少ないだろう。迷っても人の家を破壊して突っ切ってしまえばいいし。 クルマの種類も豊富! ウィンストンのクルマ(厳密に言うとお隣さんのクルマを借りているらしい)や会社の配達トラックに乗れるほか、ゲーム内に登場する多数の車両に乗ることが可能。どう考えても窃盗なような気もするが、街中に駐車されているクルマも気軽に乗れるようになっている。 さすがにドライバーをクルマから無理やり降ろして奪うような強盗行為はできないが、クルマがブッ壊れたらその場にあったクルマに乗り換え……なんてことも可能だ。 なお、ウィンストンのクルマや配達トラックなど物語に紐づく車両については、壊れても街中にある電話ボックスに入ると近くにリスポーンしてくれる。 街中には隠された車両も存在し、見つけ出すとその場にマークされ、いつでも自由に乗り降りできた。ショップで購入した自転車乗ることも可能。 クルマのカスタムでカオス度アップ! 会社のトラックは自宅のガレージでカスタマイズが可能。設計図を手に入れて素材を消費し制作するか、そのパーツ自体を手に入れると、トラックに装着することができた。 ストーリー進行中に手に入れたのは荷台に装着するクレーン。クレーン操作で荷物を運ぶための必須装備となっているようだ。 また、進行とは直接関係ない場所で手に入れたパーツではドアとボンネットを強化できた。 怒った人間はドアなどに張り付いてくる場合があるので、それを振り払うためにドアを開閉したり、オブジェクトを破壊するために使用することも可能だった。 装備品はまだまだあるようで、効果を見るにウィンチを取り付けるものや、ロケットブースターで加速などが可能なようだ。トラックを強化していくことで、よりカオスな配達業務が楽しめるだろう。 豊富で笑えるミッション群 本作は街なかを探索できる“自由パート”と、ミッションを進行する“ストーリーパート”に分かれている。 自由パートで無線を使ってミッションを受注、それぞれの開始地点に向かうとミッションがスタート。これをくり返しこなすことでメインストーリーが進んでいく。 マップには宝箱的なアイテムボックスやお金の入った箱などが散らばっている。自由パートで探索してアイテムを集めたり、お金を稼ぐ、またはサブミッションに挑むこともできた。 本作最大の魅力とも言えるのが、メインミッションの展開だ。何かしらの事情がある配達業務に挑むわけだが、配達するモノによってミッションの内容がよりハチャメチャになっていく。たとえば、 ・クルマを破壊してしまう花火を打ち上げながら輸送。 ・暴れる巨大カジキマグロのお腹を満たしながら配送。 ・クルマが浮いてしまう風船を積みながら走る(飛ぶ)。 ……などなど、だいたい何かしらの障害を積みながら配達することになるだ。 個人的には、ミッションバリエーションこそが本作のいちばんおもしろい部分だと感じた。プレイを進めるたびに「つぎは何を運ぶんだ!?」というワクワクが押し寄せてくる。 サブミッションも、幽霊が付いているため勝手に飛び上がったり跳ねたりする、いわくつきのクルマを火山にブチ込んで燃やすなど、その内容はバラエティ豊か。 音楽がいい 文章では伝わらないが、全編を通して1950年代を彷彿とさせるクラシカルなBGMで包まれており、音楽がとてもいい。激しいシーンもあるゲームではあるが、その反面BGMはカントリーな空気があり、そのギャップがなんともシュールだ。ときにはノリノリのロックBGMが流れたりして、メリハリがあるのもいい。ドライブゲームの側面もあるので、音楽を聞きながらまったりと街中を走るのも悪くないだろう。 物語がマジメすぎるかも? 街中を破壊しながら走れることは最初に驚きはあるものの、破壊すること自体に大きなメリットがあるわけではない。終始その環境で進められる、しだいに慣れてしまうだろう。全体的にはゲラゲラと笑いながら、さまざまなミッションを楽しむゲームだと感じた。 ただ、試遊した範囲では物語は基本的にシリアスで、いい意味でバカげた見た目とプレイフィールとは反対に、ウィンストンという男を取り巻く物語が淡々と進行。配達員となったウィンストンの親のことや上司との確執、宇宙ロケットへの憧れなどさまざまな事情が語られる。 読み進めれば高いドラマ性を持っているのかもしれないが、ゲーム部分の破天荒なプレイと比べると退屈に感じてしまったのが正直なところ。 メチャクチャな荷物を運んでいるのに、ウィンストンや周囲の人々はそれを至極ふつうのことのように扱い、ツッコミ役などもいないため「なんでこの人たち疑問に思わないんだろう?」と、物語がリアルなゆえに気になってしまった。 また、セリフや会話の翻訳はすばらしいのだが、新聞など一部のテキストは翻訳がなく、英語で読むしかない。このあたりは無視してもストーリー進行に問題ないが、細かな世界設定が気になる人、世界に没入して楽しみたい人はモヤモヤしてしまうかも。 この後の展開に期待 もしかしたら物語のこの先で“狂気”と称しているストーリーが語られ、徐々にゲームにマッチしていくのかも。このあたりはぜひ製品版で確かめたい要素だった。 なお、体験版ではストーリー序盤を遊ぶことが可能。購入を迷っている人はまず体験版を遊んでみるといいだろう。