5月、2026年ワールドカップに向けてアジア最終予選の日本代表メンバーが発表された。2024年に不同意性交容疑で逮捕され不起訴となった佐野海舟選手も選ばれ、性加害疑惑のある人が代表でいいのかと反発が起きた。ジャーナリストの柴田優呼さんは「今回の決定のように、なぜ性加害側に沿った対応が社会の中で支配的なのか」という――。 ■性加害容疑の選手について森保監督に質問した 不同意性交容疑で逮捕されたがその後不起訴処分となり、ドイツでプレー中の佐野海舟選手がサッカー日本代表に選ばれたことに対して、X(旧ツイッター)などで批判の声が上がっている。佐野選手の代表招集を支持する声もある一方で、オンライン署名サイトのChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)で撤回を求める署名に約7800人の賛同者が集まった。5月下旬に開かれた記者会見で、森保一・日本代表監督が代表選出について説明する際、佐野選手のしたことを「ミス」と発言したことも、性暴力はミスなのかと批判の対象になっている。 森保監督はその後再び6月16日に、日本記者クラブで会見を行った。ワールドカップ最終予選を終えての開催だったが、前回の会見時、森保監督の発言に対して報道陣の突っ込みが足りないという批判も出ていたため、事実関係を確認しようと、出席して質問した。 性加害問題の会見でふだんよく見かける記者たちは少なかったようで、私の質問をさらに掘り下げる関連質問は出なかった。来年のワールドカップ開催を控え、東京五輪やジャニーズ問題の時のような新聞やテレビの忖度がされていないことを願うばかりだ。 質問したうちの1つは、不起訴処分の中身についてだ。不起訴と言っても(1)嫌疑なし、(2)嫌疑不十分、そして(3)嫌疑はあるが、示談が成立したため起訴猶予となる場合がある。佐野選手については、被害者側に謝罪し話し合いをしたという日本サッカー協会(JFA)の話も報道されている(ハフポスト「佐野海舟選手の性暴力を巡る問題で、「ミス」発言の森保一監督に批判。サッカー協会に見解を聞いた」)。もし嫌疑がないのであれば、その必要はないと考えるのが自然だ。そうであるなら、嫌疑はあるが示談の結果、起訴猶予となったという理解でいいのか、聞いてみた。 ■「不起訴の詳細は確認していない」という代表監督 森保監督の答は端的に言って、「不起訴となった詳細は確認していない」というものだった。「守秘義務があるため、佐野選手と被害女性の間でどんな話し合いがあったか、ヒアリングもしていない」という。不起訴という結果になっても、それが即、不同意性交の事実がなかったということにはならない可能性がある以上、その確認をしていないことに疑問はあるが、結局のところ、あまり性加害問題を重視していない印象を受けた。 もう一つの質問は、二次加害を起こさないよう被害女性に配慮する必要はないのかという点だ。性暴力の被害者は長期にわたって苦しむことが多く、最近はフジテレビの件に見られるように、二次加害の深刻さが指摘されている。佐野選手が日本代表になり、プレーする様子が大々的に報道されるのを見て、被害女性がフラッシュバックを起こすということはないのか。そうしたことが起きないよう、被害者保護についても十分考える必要があると思うが、代表選出の際にその点を検討したのか聞いた。