山上被告の量刑、手製銃の「発射罪」成立が左右 10月初公判、旧統一教会の影響も焦点

安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪で起訴された山上徹也被告(44)の裁判員裁判は、発生から3年以上を経て今年10月28日から奈良地裁で始まる。弁護側は刑事責任能力や殺意については争わないもようで、刑の重さを巡る審理が中心になりそうだ。 被告は令和4年7月8日、奈良市で演説中だった安倍氏の至近距離から、手製の銃で金属製の弾丸数発を発射して命中させ、殺害したなどとして起訴された。起訴された罪名は殺人や銃刀法違反など計5つに上る。 逮捕当初から殺人容疑などを認めていたとされ、検察側は起訴前に鑑定留置を実施し、刑事責任能力があると判断した。これまで7回の公判前整理手続きが行われたが、関係者によると、弁護側もこれらの点について、公判で積極的に争わない方針だという。 量刑に影響しそうなのが、法定刑の上限が無期懲役と重い銃刀法の「発射罪」の成否だ。事件当時の銃刀法では発射罪を適用するのは「拳銃等」に限定。拳銃等とは、拳銃▽小銃▽機関銃▽砲-の4つを指す。手製銃はバッテリーから通電して火薬に着火し、2本を束ねた金属筒から一度に弾丸6発が発射される仕組みで、検察側は「砲」にあたると判断した。 一方、関係者によると、弁護側は手製銃が4つの拳銃等に当てはまらない「その他の装薬銃砲」で、発射罪の適用対象外だと主張するとみられる。元鹿児島県警本部長で銃刀法に詳しい大塚尚(たかし)弁護士によると、法令上の「砲」の要件は口径の大きさしかない。裁判例も乏しく、大塚弁護士は「手製銃の構造などによっては『その他』に分類されることもあり得る」と述べる。 山上被告は捜査段階で、母親が旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に入信し、多額の献金をしたことで生活が困窮したと説明。教団に恨みを募らせ、「教団とつながりがある安倍氏を狙った」などと供述した。ただ、情状面の審理で、事件に至った経緯がどこまで明らかになるかは不透明だ。 関係者によると、弁護側は成育歴を解明する「情状鑑定」を請求したが、地裁が却下。代わりに宗教学者を被告に面会させており、鑑定とは別の形で旧統一教会の影響を主張し、情状酌量を求めるとみられる。

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