昨年5月、東京都新宿区のタワーマンション敷地内で女性=当時(25)=が刺殺された事件で、東京地裁が今月、殺人罪などに問われた被告の男に対し、懲役15年の判決を言い渡した。女性との結婚を夢見て多額のカネを貢いだ末に起こした凶行。法廷では、本名も教えてくれなかった女性との「疑似恋愛に過ぎない」(検察側)関係にのめり込んだ男が暴発に至る過程が明かされた。 ■「人生かけてくれたら結婚する」 被害女性と和久井学被告(52)が知り合ったのは平成30年ごろ。女性は交流サイト(SNS)でライブ配信をしており、その「オフ会」として女性や被告を含む3、4人で食事をしたり、2人きりで都内をドライブしたりしたこともあったという。 女性が経営していたガールズバーやキャバクラにも通うようになった被告。令和3年11月、女性から「私の夢のために人生をかけてくれたら結婚する」と言われ、キャバクラで高額のシャンパンタワーを注文することなどを求められた。 結婚を夢見て要求に応えようとする被告。公判では、弁護側から結婚について「営業トークだと思わなかったのか」と問われると、「配信者とリスナーという形で知り合っていたので、だまされるとは思っていなかった」と述べた。 一方で、検察側の「女性の本名を直接聞いたことは」「携帯電話の番号は(聞いていたか)」との質問には「ないです」と回答。連絡は主にLINE(ライン)で行われ、女性から個人情報を教えてもらうことはなかったようだ。 ■ラインのやりとり 判決によると、被告はこれまで大切にしてきた車とバイクを計約1750万円で売却し、そのうち1600万円を店で使う前払い金として女性に渡していた。 法廷では、結婚やカネを巡るラインの履歴が読み上げられた。 《結婚するつもりないのに1600万円受け取ったの?》と詰め寄る被告に、女性は《だから店で使ったんだろ。だまし取ったみたいな言い方きもい》と返信。シャンパンタワーには前払い金の残りでは足りないとして、女性は《力不足でしょ》《ラインしてる暇あるなら(仕事を探す)電話かけられるよね》《私への愛情分のお金をもってくるんだよね》などと送っていた。 被告に借金を勧める内容もあり、やりとりからは、結婚にあいまいな態度をとる女性との関係にのめり込んでいく様子が浮かぶ。被告人質問では、数百万円の借金を重ねた上、給料のほとんどを返済に充てる生活を送っていたことが明かされた。