9月20日から26日は「動物愛護週間」です。そこできょうは、「飼い主のいないネコ」について考えます。 2013年度からの10年間で県の動物愛護センターに収容されたネコの数と殺処分された数の推移です。 収容されるネコの数が大幅に減っているのに伴い、処分されるネコの数も減っていますが、未だに100匹以上が殺処分されています。 2016年度から昨年度までに県に寄せられた、「ネコに関する苦情」の件数です。 餌付けや糞尿などの苦情が毎年1000件以上寄せられていて、ほぼ横ばいの状態が続いています。 ネコの命を大切にしつつ、人と共生することが課題となっていますが、これを獣医師の立場から解決しようと、「ネコの不妊去勢手術」専門の病院を開き、奮闘する人がいます。 19日、塩釜市の駐車場に停まった1台のワゴン車。車内で行われていたのは飼い主のいないネコの「不妊去勢手術」です。 ネコを連れてくるのは、「TNR活動」などネコの保護活動に取り組むボランティア。 ネコは繁殖力が強く、飼い主のいないネコは、放っておくとあっという間に増えて、糞尿や鳴き声など地域の環境を悪化させ、結局は殺処分にもつながります。 「TNR活動」は飼い主のいないネコを一旦捕獲して、不妊去勢手術を行い、元の場所に戻す、というもの。ネコの大量繁殖を防ぎ殺処分を減らす、つまり、ネコの命を守ることが目的で、県や仙台市も取り組みを支援しています。 猫を持ち込んだボランティア 「1人ができることは限界があるんですけど、私がちょっと頑張れば助けられる命があるんだったらっていう気持ちがある。」 手術をするのは、獣医師の松田聡子さん。 松田さんは、獣医師とスタッフの仲間2人と共に、今年5月、大崎市三本木を拠点に「ネコの不妊去勢手術専門」の病院を開きました。 移動式の手術室で県内各地をまわり手術を行っています。 にじのはしスペイクリニック宮城分院 松田聡子院長 「例えば、免許を返納してしまって病院に連れていけない。近くに病院がない。解決しようと思っていても、その一歩が踏み出せない状況がたくさんあったので、私たちはその場に行って、必要な時に、必要な場所に行って、なるべく手術に対するハードルが低くなるように手術をするっていうことをやっていきたいと思いました。」 手術専門病院のため、通常の病院とは違い、事前にレントゲン検査や血液検査を行わず、メスは30分、オスは10分ほどで手術が完了します。そのため、費用も、一般的な動物病院の、半分から3分の1ほどに抑えられ、例えば、県獣医師会の助成金を活用すれば、メス・オス共に1000円で手術が受けられます。 ネコを保護する人の負担を減らそうと費用面に加えて、できるだけ早く手術を行うことも重視しています。 にじのはしスペイクリニック宮城分院 松田聡子院長 「解決したいと思っていても、今予約いっぱいだから2カ月後ねって言われると、野良ネコを2カ月置いておくことってできないじゃないですか。」 この日は、塩釜市内や仙台市内で捕獲したネコ、6匹が手術を受けました。 こちらの病院では、今年5月に開院してからこれまでに、470匹以上の手術を行っています。 松田さんたちは、かつて、県の公務員獣医師や職員として、県動物愛護センターなどに勤務していた経験があります。 そこで、飼い主のいないネコを取り巻く厳しい現実に直面したことが、病院を開くことにつながりました。 にじのはしスペイクリニック宮城分院 後藤真理子さん( 「多頭飼育崩壊などで1日で20匹収容されることもあって、もらわれる数よりも収容される数が上回ってきてしまって、水際対策をしっかりしていかなければならないと感じていました。」 増えすぎたネコが原因で地域から孤立してしまった人も見てきたと松田さんは話します。 にじのはしスペイクリニック宮城分院 松田聡子院長 「増えてしまって、もう自分でもどうしていいかわからなくて。それでも鳴かれたら餌をやらずにはいられなくて。自分の食べるものを我慢してネコに餌をあげてた方。もう周りから苦情を言われているから地域に戻ることもできなかったりして、孤独死だったりとか、そういう問題って起きてきたりしていたんですね。」 この日、松田さんたちは、大崎市内で講演を行いました。松田さんは、実際の事例をもとに不妊去勢手術の大切さを伝えました。 2匹のネコを保護した後、あっという間に80匹にまで増え飼い主がどうすることもできなくなったケースにも対応したそうです。 にじのはしスペイクリニック宮城分院 松田聡子院長 「こういうふうになってしまわないようにするにはどうしたらいいか、増えないための解決方法はたった一つ、不妊去勢手術をしてほしい」 講演会には、大崎市内から20人ほどが集まりました。 参加した人は 「空き家も増えている中で子ネコが増えてしまって、糞尿の問題であったり、講座の中にもあったエサやりの問題も聞いている。」 「(ネコが)好きとか嫌いとか排除して地域ネコに関心を持つことが大事なんだと感じました」 松田さんは、まずは「知ってもらうこと」が大切とした上で、様々な立場の人がそれぞれのできることをやってほしいと話します。 にじのはしスペイクリニック宮城分院 松田聡子院長 「私たちができることを少しずつ持ち寄って、私たちは手術の提供だったり、こうイベントとかで啓発することだったりだとは思うんですけど、餌やりさんは頑張って手術するとか、あとはトイレを作ってあげるとか。地域の方はこういうのあるよって教えてあげるとか。それぞれが持ち寄って、ネコが幸せに人が穏やかになる宮城県になるのが一番いいなって思ってます。」 一方、飼い主のいないネコをめぐって事件も起きています。 熊本県で、ネコの保護活動を行っていた女が不衛生な環境でネコを飼育し、十分にえさを与えず衰弱死させた疑いで、今月18日、警察に逮捕されました。 調べに対して「預かるネコが増えるにつれ費用や手間が増え、段々、面倒になっていった」と供述しているということです。 この事件について、松田さんは、「自分のキャパシティを考えないと、結局猫も人も不幸になってしまう。」と話していました。 ネコを保護する人は責任を持って飼育することが大前提ですが、保護活動に多額の費用がかかるのも事実です。 保護している間の餌代や不妊去勢手術は主にボランティアなどの自費で賄われています。 誰かが抱え込むのでなく松田さんが言っていたようにそれぞれができることをやることが、地域の環境もネコの命も、どちらも大切にしていくことになります。