東京・赤坂のサウナ室で夫婦が死亡した事故で、非常ボタンの通報を知らせる装置について、サウナの従業員らが「2年ほど前から電源を入れたことがない」と話していることが分かりました。“” 12月15日、東京・赤坂で起きた火事。 現場は「大人の隠れ家」をうたう会員制の個室サウナです。 この火事で都内で美容院を経営していた松田政也さん（36）と妻の陽子さん（37）の夫婦が亡くなりました。 警察によりますと、火事が発生した当時、非常ボタンが押されたことを知らせる装置の電源が入っていなかったということです。 松田さん夫婦は当日、午前11時ごろに入店。2人でサウナ室に入りました。その後、木製のドアノブが外れ、閉じ込められたとみられます。 捜査関係者によると、2人は脱出するため、ドアのガラスを割ろうとした可能性があることもわかっています。しかし、ガラスを割ることはできなかったとみられ「サウナストーン」をくるんでいたタオルが焦げた可能性があるということです。 また、室内の非常ボタンのカバーが壊れていて、押そうとした形跡があったということです。 夫婦が入店してから1時間ほどたった後、「建物の3階でベルが鳴っている」と119番通報がありましたが、消防隊員が到着した時、夫婦は出入り口付近に倒れていたということです。 助けを求めたとみられる夫婦。非常ボタンは、押すことはできたということですが、いくら押しても「助けを求める信号」は届かない状態だったのです。 電源ボタンは受信盤についているということですが、警視庁の任意の聴取に対しオーナーの男性は…。 オーナーの男性 「今まで電源を入れたことがない。触ったこともない」 当時、個室サウナが入るビルには従業員がオーナーを含めて3人いましたが、別の業務をしていたため、事務所にはいなかったということです。 また17日夜、ほかにもドアノブにガタつきのある個室があったことが捜査関係者への取材でわかりました。 その後の捜査関係者の取材で従業員らが装置について…。 従業員 「2年ほど前から電源を入れたことがない」 「前のオーナーから引き継いでから、電源を入れたことがない」 非常ボタンを押したとみられる2人。しかし、SOSは届かず命は失われました。 美容院経営・松田政也さん（36） 「僕は現場のお客様のリアルな声を集めたいなと思ったんですよね」 東京都内で美容院を営み、自身のSNSでこのような投稿もしていた松田さん。 かつて同じ店で働いていた人は。 同じ店で働いていた人 「すごく頑張っていた。美容師としてもこれからというときだった」 司法解剖が行われた結果、2人の死因は不詳。 ただ、焼死や高体温症死の可能性があるということで、警視庁は引き続き死因の特定を進めるとともに、業務上過失致死の疑いも視野にサウナ運営側の安全管理に問題がなかったか捜査するとしています。 今後、どんな捜査になるのでしょうか。 業務上過失致死事案などを担当していた元神奈川県警捜査1課長の鳴海氏は。 元神奈川県警 捜査1課長・鳴海達之氏 「捜査のポイントはこれから先、事業者側でこういう事態を予見できたかどうか、それにかかってくる。人為的ミスなのかそれとも故障による電源断になってしまったのか、電気系統のものは分解して調べたりしないといけない。人為的に電源が落とされているのであれば、業務上過失致死容疑に該当するような行為ですから、重大な部分。原因が明らかになって、事業者側の過失が大きいとなれば、逮捕事案に発展する可能性は十分にあると思います」 18日、大阪市内にある個室サウナ店を訪れてみると…。 報告・髙橋克哉 記者 「こちらのサウナの場合、入り口の扉は内側も外側もドアノブはついていません。そして中に入っていきますと、座ってすぐ目立つところに非常用のボタンが設置されています」 個室は、サウナのほかシャワーや、休憩をするスペースまであり、プライバシーが重視された空間となっています。 そのため、緊急時には、外にいるスタッフを呼べる環境になっていて、非常用ボタンのほかにも…。 髙橋記者 「こちらのサウナでは、体調に異変を感じた時はスマートフォンでスタッフを呼び出すこともできるということです」 手元のスマホから呼び出すと、受付のカウンターにすぐに伝わる仕組みになっています。 また、こちらの店では、系列店を含めて、サウナの扉はすべて内側から押して出られる形に統一しているということです。 MENTE統括マネージャー・増田遥さん 「そもそもサウナだと、何か急に立ちくらみや体調が悪くなるのも十分に考えられるので、手間がないように押して出られるような形をとっています。私もサウナ利用することがあるが、ドアノブで設計されている所はあまり見たことがないので、ほとんどの施設は押して出られるようになっていると思います」 今回の事案を受け、周囲からは不安の声が多く寄せられているといいます。 MENTE統括マネージャー・増田遥さん 「正直、『ありえないな』っていうのが一番思っていることでして。自分たちも気を引き締めないといけないなと強く感じています」