トランプ米大統領は8日、自身のソーシャルメディアへの投稿で、中西部イリノイ州のプリツカー知事とジョンソン・シカゴ市長は収監されるべきだと主張した。共和党のトランプ氏は治安対策を名目にシカゴに州兵を派遣する方針を示しているが、地元の2首長(いずれも民主党)は強く反発。トランプ氏が圧力を強める中、州兵は既にシカゴ郊外に集結しているとされ、全米第3の都市を巡る対立は激化している。 トランプ氏は投稿に「シカゴ市長は移民・税関捜査局(ICE)の職員を守れなかったので刑務所に入れられるべきだ! プリツカー知事もだ!」と書き込み、2人が法律違反をしたように一方的に決めつけた。ただし、どの法律に違反したのかは示していない。 一方、プリツカー氏はX(ツイッター)で「私は後退しない」と投稿。トランプ氏が逮捕を要求しているのは大統領の権力を監視する役割を担う選挙で選ばれた人たちだと訴え、「完全な権威主義」に向かっていると批判した。ジョンソン市長はCNNテレビのインタビューで「この大統領は精神的に不安定で二面性があり、率直に言って我々の民主主義に対する脅威だ」と反発した。 シカゴ周辺では、移民の取り締まりを強化しているICE職員らに対し、市民らが抗議活動をしている。10月3、4日には抗議するデモ隊の一部と警察などが衝突し、緊張感が高まっている。 トランプ氏は4日、シカゴで「制御不能な犯罪」が起きているとして州兵300人を派遣することを承認した。これに対し、イリノイ州とシカゴ市は6日、シカゴへの州兵派遣の差し止めを求めて連邦地裁に提訴。前日の5日には、トランプ氏が指示した西部オレゴン州ポートランドへの州兵派遣を巡り、連邦地裁が差し止め命令を出してトランプ政権側が控訴している。 裁判所からの派遣差し止めを回避するため、トランプ氏は1807年に制定された「反乱法」を適用する可能性にも言及している。反乱法は、「外国による攻撃」や「反乱、暴動」などに対し、大統領が州知事の承認なく軍を投入できると定めている。ただ、1992年のロサンゼルス暴動を最後に近年は適用されていない。 強硬姿勢の背景には、トランプ氏が2026年中間選挙の主要争点に「犯罪対策」を据えようとしていることがある。今春以降、西部カリフォルニア州ロサンゼルスと首都ワシントンに州兵数千人を派遣。南部テネシー州メンフィスにも派遣を始めたほか、ポートランドとシカゴへの派遣を表明した。東部のニューヨークやメリーランド州ボルティモアなど他の都市へも派遣する可能性を示している。 州兵の派遣先はいずれも民主党の地盤だ。犯罪への懸念を強調し、「『法と秩序』の回復に積極的なトランプ政権と、それに消極的な民主党」という対立構図を印象付ける狙いがある。【ワシントン西田進一郎】