追突事故 検察「異例の無罪論告」 てんかん発作と医師 長崎地裁佐世保支部

車で追突事故を起こし、ひき逃げなどの罪に問われた佐世保市の男性被告の論告求刑公判が26日、長崎地裁佐世保支部(岩田光生裁判長)であり、検察側は「立証証拠がない」として、無罪を求める論告をした。来年1月28日に予定される判決公判では無罪が言い渡される見通し。責任能力が問えないてんかんの発作を事故当時に起こしていたとの複数の医師の見解が示されたためで、無罪論告は異例。 罪に問われているのは同市椎木町の会社員の被告(53)。最終意見陳述では「事故を起こしたことは事実。被害者に申し訳ない」と謝罪した。一方で取り調べから起訴に至るまでの一連の対応に「納得がいかない」と語り「刑事から『相手を殺すつもりだったのかもしれない』とまで言われ、腹が立った。失った時間と信用を返してほしい」と涙ぐんだ。 起訴状によると、今年1月28日午前、同市吉岡町の国道で乗用車を運転中、赤信号で停車していた無職女性の軽乗用車に追突、逃走したとされる。同29日に逮捕され、2月19日に道交法違反(ひき逃げ)と自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)の罪で起訴された。 4月17日の初公判直前、佐賀県内の駐車場で起こした自損事故をきっかけに、病院を受診、てんかんと診断された。公判では一貫して無罪を主張。事故時に発作による意識障害を起こし、運転に影響を与えたかどうかが争点となった。 検察側は論告で「2医師の聴取結果を踏まえ、あらためて証拠関係を精査した結果、意識障害を起こしていなかったことを立証することは困難」と述べ「被告には無罪判決が宣告されるのが相当」とした。 最終弁論で弁護人の松田貴史弁護士は「被告は事故直前に発作を起こしており、過失及び責任能力はない。逃走を図る動機も一切存在せず、無罪」と主張した。公判後、無罪論告には「証拠を客観的に評価してもらった結果だと受け止めている。司法の判断に委ねたい」と話した。

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