【AFP=時事】フランスは29日、アカデミー賞受賞作『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の制作に協力したパレスチナ人活動家がパレスチナ自治区ヨルダン川西岸で「殺害」されたことを非難し、イスラエル人入植者による暴力を「テロ」と呼んだ。 パレスチナ当局は、イスラエル人入植者が28日に教師のアウダ・ムハンマド・ハサリーンさんを殺害したと発表した。イスラエル警察は捜査中としながらも、入植者によって殺害されたという点には直接言及しなかった。 仏外務省の報道官は、「フランスは、今回の殺人およびヨルダン川西岸全域で増加しているパレスチナ人に対する過激派入植者によるあらゆる意図的な暴力行為を、最も強い言葉で非難する」「これらの暴力行為はテロ行為だ」と述べた。 さらにイスラエル当局に対し、「全く処罰を受けずに続けられているこうした暴力行為の加害者を直ちに処罰し、パレスチナの民間人を保護する」よう強く求めた。 パレスチナ自治政府(PA)教育省は、イスラエル人入植者がヨルダン川西岸南部ヘブロン近郊のウムアルハイル村を襲撃し、ハサリーンさんを殺害したと非難した。 イスラエル警察は、ウムアルハイル村に隣接する入植地カーメル近郊で起きた事件について捜査中だとして、イスラエル人1人を尋問のために逮捕したと付け加えた。 ハサリーンさんは、ヘブロンの南に位置する丘陵地帯にある村落の集まり「マサフェル・ヤッタ」の住民だった。この地域はイスラエルによって軍事区域に指定されている。 イスラエル軍によるパレスチナ人家屋の破壊を阻止しようとするハサリーンさんらの試みは、3月にアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の題材となった。 同作の共同監督を務めたイスラエル人のユヴァル・アブラハーム氏はインスタグラムに、「イスラエル人入植者が、マサフェル・ヤッタで『ノー・アザー・ランド』の撮影に協力してくれた素晴らしい活動家(ハサリーンさん)の肺を撃った」とつづった。 ヨルダン川西岸では、パレスチナ人約300万人が暮らす一方、国際法違反とみなされ、国連にたびたび非難されてている入植地に約50万人のイスラエル人も居住している。 パレスチナ自治政府のデータに基づくAFPの集計によると、ヨルダン川西岸では2023年10月のガザ紛争開始以来、イスラエルの兵士または入植者は、少なくとも962人のパレスチナ人を殺害している。この数字には戦闘員と民間人の双方が含まれる。 イスラエルの公式データによると、パレスチナ人による攻撃やイスラエル軍の作戦中、少なくとも36人のイスラエル人が殺害されている。この数字には兵士と民間人の双方が含まれる。【翻訳編集】 AFPBB News