格安商品を買ったら犯罪の加担者になっていた!? 「トライアングレーション詐欺」の手口を知っておこう

欲しかった商品が信じられないほどの低価格で販売されている――そんな「うますぎる話」に出会ったとき、すぐに購入ボタンをクリックしていませんか? そんな人は要注意。その取引が、あなたを知らぬ間に犯罪の片棒を担がせる、巧妙な詐欺の一部もしれないからです。 今回は、ネットショッピングの世界で広がっている「トライアングレーション詐欺」という手口について紹介します。複数の関係者全員が被害に遭う、質の悪いネット詐欺の手口なので、要チェックです。 詐欺師はまず、オンライン上に偽のネットショップサイトを開設、あるいは、大手マーケットプレイス上に偽の出品アカウントを開設します。そして、電子機器やブランド品など、需要が高い商品を販売するのですが、市場価格を大幅に下回る低価格を設定します。 掘り出し物を見つけたと喜んでその詐欺ショップで商品を注文すると、購入者は自分のクレジットカード情報と配送先住所を詐欺師に提供することになります。この時点で、詐欺師は購入者から代金としてお金を受け取る(最終的にはだまし取る)と同時に、カード情報と配送先住所の情報を、このあとで悪用するために収集します。 ここまでであれば、従来にも見られたショッピング詐欺です。トライアングレーション詐欺は、まだ続きます。 詐欺師は、ほかの正規の販売業者に対して同じ商品を注文するのです。ここが詐欺のキモになる部分なのですが、支払いには、先ほどの購入者のカード情報ではなく、過去にデータが流出・盗難に遭ったもの、あるいはダークウェブで購入した全く無関係な第三者のカード情報を使用するのです。すなわち、その商品の配送先は前述の購入者の住所、代金の請求先は盗難カードの所有者ということになります。 正規の販売業者は、配送先と請求先が異なる注文を受け取りますが、そうした事例はギフト配送などで一般的ですので、すぐには疑いません。注文は処理され、商品は購入者の元へ直接発送されます。購入者は注文通りの商品を受け取るため、取引は完了したと思い込みます。一般的なショッピング詐欺と異なり、商品が届くために、購入者からの苦情は発生しません。満足した購入者が偽ショップに好意的なレビューを残し、それが次の被害者を生むことさえあります。 犯罪は、数週間後、盗難カードの所有者が身に覚えのない請求に気付くまで発覚しないのです。この発覚の遅れ、つまり不可視性の高さが、トライアングレーション詐欺の恐ろしいところです。 お金をだまし取った詐欺師以外の、購入者、盗難カード所有者、正規の販売会社の全員が大きな被害を受けます。最も大きな被害を受けるのが、正規の販売業者です。盗難カードの所有者が不正利用を申告すると、カード会社はチャージバック(支払い拒否)を開始し、販売業者への支払いを強制的に取り消します。その結果、販売業者は発送した商品を失い、チャージバックによって売上も失います。送料やチャージバックに伴うペナルティ手数料も発生するでしょう。 もちろん、盗難カードの所有者も被害者です。金銭面では保護されることが多いものの、カード再発行の手間や、情報漏えいによる精神的ストレスは計り知れません。 では、安く商品を手に入れた購入者は「得をした」と言えるのでしょうか。決してそうではありません。購入者は、自身の個人情報とカード情報を詐欺師に渡してしまっています。個人情報はダークウェブで売られることになるかもしれません。カード情報は次のトライアングレーション詐欺で使われるかもしれません。 さらに深刻なのは、この詐欺取引において、購入者がマネーロンダリングの手伝いをした無意識の運び屋(Mule)として機能してしまっている点です。これは、犯罪に加担したとみなされるリスクを孕んでいます。 実際に、そうした巻き込まれ被害も発生しています。2023年3月、カナダ人の男性が、大手マーケットプレイスの出品者から遊具を購入しました。しかし、その出品者が、別の正規販売業者から盗難カードを使って遊具を注文し、男性の住所へ配送させていたことが、のちに判明しました。男性は正当な購入者であったにもかかわらず、不正に入手された商品の受取人であるという理由で、詐欺の容疑で逮捕され、刑事告発されてしまったのです。職を失い、その後の就職にも影響が出ているそうです。 この巧妙な罠から身を守るための対策は、いつもと同じです。最も重要なのは、「うますぎる話」に対して警戒心を持つことです。市場価格を大きく下回る商品を見つけたら、まずは疑ってかかる視点を持ちましょう。 購入後のチェックも忘れてはなりません。もし、注文したサイトとは異なる有名小売業者(例えばAmazonやWalmartなど)の梱包で商品が届いたら、それはトライアングレーション詐欺に巻き込まれた可能性を示すサインです。もし被害に気付いたら、直ちにカード会社に連絡し、カードの停止を依頼してください。 格安商品を買っただけで、逮捕・解雇されて人生を壊されてはたまりません。ネットリテラシーを身に付け、自衛しましょう。 NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構) 高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「[email protected]」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。 ※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください 参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと

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